自転車

□可愛いって言わないで
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『巻ちゃん、着いたぞ!』
「今行くショ」

巻島の声を聞いてから東堂は電話を切って携帯を尻ポケットに押し込んだ。
今日は巻島の家に初めてのお泊まりだ。
東堂は巻島邸の前でそわそわと巻島が出てくるのを待った。

「よぉ」
ガチャっと扉を開いて派手な私服を着た巻島が出てくる。
「やあ巻ちゃん!今日も可愛いな」
「............」
東堂がにこやかに言っているが、巻島は不服そうに表情を歪めた。

東堂は付き合うようになってからひっきりなしに巻島に“可愛い”と言うようになった。
別に格好いいと言って欲しい訳じゃないし、格好いい部類に入らないのも知っているが、だからと言って決して可愛い部類にも自分は入らない。
東堂が考えている事など到底理解出来る事は無いだろうが、可愛いと言ってくるのは余計分からない。
自分のどこに可愛いらしさが存在するのか全く見当がつかないが、まあ別にやっかむことでもないので、放っておく。

ご飯は巻島の手作り。東堂が食べたいと言ったからだ。
巻島は普段から家事をこなす事が多い為、割りと東堂のリクエストに応える事が出来た。
美味しいぞ巻ちゃん!とおかわりをする東堂に巻島はまあこういうのも悪くないと笑った。
2人で並んで食器を洗っていれば、東堂が照れたようにはにかんでまるで新婚のようだな、と言った。
巻島も顔を赤くしそーだな、と言えば東堂はまた巻ちゃんは可愛いな、と微笑んだ。
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