排球

□飴1つ。
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「あっすっがわっらさーん!」
昼休み、部活の事で日向の所に来ていれば、日向が俺の肩越しにそう叫んで、心臓が一瞬跳ねる。
振り向けば菅原さんはいつもどおりの爽やかな笑顔で手を振っていた。

菅原さんは俺の憧れの人だ。そんで...好きな人。
烏野の正セッター周りからの信頼もあつくて人一倍努力を惜しまない人。
日向と楽しそうに話す菅原さんを見て、俺と喋ってもきっとこういう笑顔にはならなさそうだな、と虚しく考える。
「影山ー?どうした?」
菅原さんが俺を見上げる。
意外と近かった距離に目を見開いた。

「や...何でも、無いっす」
「嘘。影山ってさ、自分では気づいてないかもだけど嘘とか何かを誤魔化すとき決まってズボン掴むんだ」
言って菅原さんは俺の手を指さす。
「へぇー本当だ。菅原さんって影山の事よく見てるんですね!」
「えっ」「はあ!?」
日向の言葉に菅原さんと同時に反応してしまった。
菅原さんの顔が、少しだけ赤い。
多分俺はもっと赤い。

そんな俺らを取り残して日向は、ねぇ菅原さん俺は!?俺は何かクセあります?と菅原さんに顔を輝かせて答えをまっている。
「いや、日向はクセっていうより、顔に全部出るからなー...」

キーンコーンカーンコーン
そこで昼休み終了の鐘が鳴る。
日向がやっべ!辞書借りに行かねーと!と隣のクラスに走り込んだ。
「忙しい奴だなぁ。あ、影山。ハイ」
「?」
菅原さんに手を出され不思議に思いながら俺も手を出すと、俺の掌に飴が1つ転がった。
「あげる」
また優しく笑って、菅原さんは俺も行かなきゃって少し眉を下げた。
遠くなる背中に慌てて「ありがとうございます!」と叫んだ。
 

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