排球

□噂
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“及川徹と寝た奴は男でも女でも死ぬ”


そんな噂が立ったのはいつだっただろう。
確か────そうだ。俺と及川が中2の頃だ。
馬鹿げた噂だと思った。

小学生の頃から整った容姿と透き通る声で及川はムカつく位にモテていた。
クラス中の女子を虜にしただとか、先生やお母さん方までたぶらかしたなんて腐る程聞いた話だった。

中学にあがればそれなりに身長も伸び始め、幼さを残しつつも男らしい顔立ちになった及川を女子が放っておくわけもなく、小学生の時以上に及川はモテた。

その分敵も多かった。

「たかが噂だ」
放課後、図書室の机で突っ伏している及川の頭を軽く叩き、机に腰かける。
「えー?岩ちゃん何言ってんのー?ちょーウケるんだけど」
アハハ、と笑うも両腕に埋めた顔を及川は決して上げなかった。
「及川」
「...なに、岩ちゃん」
「明日、暇か」
「は?何、急に」
そうやって少しは及川の気を紛らわしてやろうと俺らしくなく動いた事もあった。

及川の噂は北一を卒業し、青城に入った今でもしつこくついてきた。
及川を恨む男共にその噂を持ち出されれば、流石に及川は慣れたのか上手くあしらえるようにはなっていた。
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