排球

□大きな体に抱かれて
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俺には憧れてる人がいる。

すっげー格好いいんだぜ!

見た目は、まあ、同じ高校生とはあんまり思えないけど。

背が高くて、どんなに難しいトスだってうってくれて、頼りになる俺らのエース、旭さん。

もっと自信持ちゃあ良いのに、いっつもオドオドしてるし気は弱いしへなちょこだし。

でもま、それもまた旭さんの良い所なんだろーな。

でも最近変なんだ。

旭さんに近づいたら心臓がすっげードキドキして、痛いし、顔も熱くなる。

前みたいに気軽にその大きい背中に触るのも躊躇っちまう。

旭さんが笑ったら胸がキューってなるし、なんかすげぇ嬉しくなる。


「それは恋...だな」

「こっ恋!!?」

部活が終わって帰りに入ったファーストフード店で、席に着くなり龍がそう言った。

今までの経緯を話した俺はガタガタッと前に乗り出す。

「どういうことだ龍!」

「ノヤ、よーく想像してみろ」

「想像?」

龍は俺の顔の前に人差し指を立てニヤりと口角を上げる。

「旭さんが、んー...まあ何処でもいいそこら辺でボーっと突っ立ってるとする」

「はあ?何だよソレ」

「まあ良いから聞けって。そんで、その旭さんを超絶美少女達が囲んでいる。旭さんはモテモテだ!」

「まあ、あんだけカッコ良けりゃ...。でも普段の旭さんはへなちょこだからな」

ふむ、と頭にイメージしながら腕を組む。

数人の美少女に囲まれる旭さんなんて困ってる顔しか浮かばない。

「で、だ。旭さんがその中の誰かとちゅーする」

「はあ!!?なんでそうなんだよ!!?」

「落ち着け、座れ、声がデカい。だからイメージだっつーの」

龍が呆れたように言うけど納得いかない。

何で旭さんが女とキスしてるシーンなんか想像しなきゃなんねぇんだ。

「イメージしたか?...どうだ?」

「どう、って」

「旭さんが知らねー女とキスしてたらお前はどう思うんだよ?」

「...嫌だ」

想像もしたくなくなった。

気持ち悪い。

鼓動が早い。

旭さんが女とキスしてるなんて嫌だ。

誰か。俺の知らない誰かに旭さんをとられるなんてごめんだ。

「...!?」

「気づいたかー?」

「龍......。俺、旭さんの事好きかもしんねぇ」

「だーから恋だっつったろー?」

ガハハと笑いながら龍が頼んでいたジンジャーエールを飲む。

俺は紙に包まれたままのハンバーガーを見下ろしてから椅子に座り直した。
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