排球
□最近の。
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やっぱ怯えさせてんのかな。
「菅原さん」
「な、何?」
前のボタンを閉めていないまま後退り、ロッカーに菅原さんの背中が当たる。
「後で部室、残ってて下さい 」
「い、いや!今日俺、今から用事あって...」
「お願いします」
「.........っ...わ、かった...」
菅原さんから了承の返事が貰えて、とりあえず安堵する。
ありがとうございます、と言って俺も着替えに入った。
*
「...で、えっと、何?」
部員は皆帰り、俺と菅原さんだけが残った部室内の空気は驚くほど重かった。
「最近......何で俺の事避けてるんすか」
「...っ」
菅原さんに近寄ると、菅原さんは反射のように後退った。
「っ、逃げないで、聞いて下さい」
咄嗟に菅原さんの腕を掴み懇願する。
「俺...この一週間、ずっと考えてたんです。何で俺避けられてんのかって
。でも原因なんか全然分かんねぇし、菅原さんに聞かなきゃ意味ねぇって思ったんです」
顔を伏せ、唇を噛み締める。
「...............が............な............だ............から......っ」
「はい?」
顔を上げれば菅原さんも腕を掴まれたまま顔を伏せ、物凄く小さい声で何かを言った。
でも全然聞き取れなくてもう一度、お願いしますと言うと、意を決したようにバッと菅原さんは顔を上げた。
「.........え」
上げた菅原さんの顔はトマトみたいに真っ赤で、思わず声を出してしまった。
「......っ、一週間前!部活無い情報回ってるかと思って!二年には回ってたけど、月島達には回って無かったみたいだから、影山と日向にも教えに行こうと一年の教室行ったら!影山が!日向の教室で、お、俺の事、す、好きだ、って言ってるのき、聞いちゃって!」
「っ!?」
早口で捲し立てるように言った菅原さんは余計に顔を赤くした。
ていうか...............
「聞かれてたのか......!!」
俺はその場にガクリと座り込んだ。
は、はは、そりゃあ部活の後輩の、しかも男に好かれてるなんて知りゃあ避けもするわな...!!
そういや一週間前、日向に部活無い事教えて貰った時、そういう話しになったんだった...。
最悪だ...あんなん聞かれるとか...!!
「はー...俺バカみたいっすね......」
「あ、いや、その、俺こそ勝手に聞いてごめんな...」
俺の目線に合わせるように菅原さんも座る。
「何で菅原さんが謝るんすか、菅原さんは何も悪くないでしょ」
あー多分、俺も今顔赤いんだろうな...。本人に言うハズじゃなかった気持ちを知られて。
もう前みたいには出来ねぇのかな。
それは嫌だな。
「安心して下さい。俺...別に最初っから言うつもりなんて無かったし、叶うなんて思って無いから...大丈夫っすよ、たった今は無理だけど、すぐ諦めますから!迷惑かけません」
俺は菅原さんに無理やり笑ってみせた。
引き攣ってねーかな。
「...っ別に、諦めなくて良いんじゃない?」
「......へ?」
思いもよらない言葉に間抜けな声が出てしまう。
「えと、...説得力ねぇかもだけど迷惑なんかじゃないし、その、むしろ嬉しかったっつーか...」
「!」
「ただ、部活とかで顔合わせて、影山が俺の事好き...なんだって思ったら、なんかすげぇ、緊張?して...や、もう、本当悪かった!避けてばっかで...!」
菅原さんは俺の隣で膝に頭を乗せた。
「...菅原さん」
「...ん」
「好きです」
「......ありがとう」
「菅原さん」
「何?」
「今は振り向いて貰えなくても、全力で、俺の事好きにさせてみせます」
「...............宣戦布告?」
「...はい」
俺達はいつの間にか二人して笑ってた。
───二週間後
「菅原さん」
「おーおはよ影山」
「おはようございます」
「ねみーなー」
「菅原さん」
「...........」
「好きです」
「だ、だからって毎日言うなーー!!///」
「朝の日課です」
影山と菅原が付き合っている、という噂がバレー部内に流れるのは4日ほど後のお話。