その3

□夜の密会
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「はーやっと終った。疲れた」

「明日も頑張ろうね!」

「明日もあるんだった…」

3日目の準備が終わり、幹ちゃん、綾ちゃんとお風呂に浸かる。


「段竹くん結局帰ってこなかったし〜」

綾ちゃんはうわーっと更にお湯に沈んだ。

私は気づかなかったが、青八木さんに連れて行かれたという段竹くん。

今日のレースの後からやけに青八木さんと会わない。まるで避けられているみたいに。

まさかと思って体のことをLINEで聞いてみるけど、【疲れているだけだ。なんともない】としか返ってこなかった。









「あれ?どこ行くの?」

お風呂から上がり、部屋に戻ってきた3人だったが、また出かけようとする名無し子に綾は問いかける。


「ちょっと約束があって」

そう言って部屋を出て行ってしまった名無し子に綾じゃニヤリと幹のほうを見る。


「もしかして鳴子と密会だったりして」

「どうなんだろ。あっ、所で明日の予定の確認ね」

「うわあああーーー」

ニッコリと笑顔の幹の言葉で綾が布団に倒れた一方、名無し子は階段を降りながらLINEの内容を確認していた。

それは悠人からの集合場所の指定。











「来てくれて良かったです」


石段の所に腰掛けていた悠人が顔を上げ、名無し子を見て笑う。


「さっきも聞いたけど…話ってLINEじゃダメだったの?」

「はい」

そう言って悠人は名無し子に頭を下げた。


「今回、色々挑発したりしてすいません」

悠人の謝罪に名無し子は驚く。


「2日目、ゴール目指して全力で走って、負けた瞬間ふと空を見上げた時、色々少し吹っ切れた所があって

 名無し子さんに悪いことしたなって思って」

「そうだったんだ…」

「直接謝りたかったんです。箱学が勝ったら彼女になるって約束もなしにします。本当にすいません」

「謝ってくれたしもういいよ」

「俺、多分勝手に名無し子さんのこと仲間意識持ってたんだと思います」

悠人の言葉に名無し子はえ?と驚く。



「隼人くんが帰ってきた時、聞いてもないのに勝手に学校の友達の事とか、部活の事とか話してくるんすよ。

 そんで写真も見せられて、名無し子さんと千花さん姉妹の話も聞いて写真見せられて、

 全然タイプ違うし、あーこの人も沢山比べられてきたんだろうなって思って」


【この人も比べられてきた】

その言葉に名無し子は悠人が隼人と比べられてきたことをなんとなく察した。



「それで名無し子さんのこと気になって、バイト先聞いて、ちょっと周りを嗅ぎまわってみたりして

 写真でも思ったけど、実物も可愛らしい人だなと思って。

 それに仲間意識が足されて、好きだと勘違いしたんだと…」

「そうだったんだ。私も好かれる理由がわかんなくてさ…分かってスッキリした」


名無し子はふふっと笑う。



「昔、お姉ちゃんと比べられてた時、自分のダメさに押しつぶされて苦しくて仕方なった。

 お姉ちゃんの友達からは私はお姉ちゃんのいらないオマケなんだって知った時も悲しくて。

 でも、総北の皆や沢山の人と出会って、部活して、色々頑張るようになって。

 それぞれの考え方、価値観をわかって。

 やっと自分はお姉ちゃんと違ってもいい。オマケなんかじゃないって思えたの。


 悠人くんのゴール争いの走り、フォームが新開さんによく似てた。

 兄弟である以前に、新開さんのことを沢山見てたんだなって思った。

 でも、その中で悠人くんらしさもあったの」


名無し子は悠人の方を見て笑いながら自分より上にある頭に手を伸ばして撫でる。






「悠人くんは新開さんの弟だけど、悠人くんは新開悠人くんだよ

 沢山頑張ってるすごい人だよ。だって1年生なのに箱学のインターハイメンバーだもん。

 弟だからなんて関係ない。君が頑張った証」
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