死神に揚羽蝶

□死神と揚羽蝶 第二部
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一瞬の美しさ。


この散りゆく刹那こそ、オイラの追い求める美。


理解出来ないなら解らせるまでよ。


その為に暁に入ったのだから。














時間は少し遡る。




飛段がアジトから出て行った後。




二人はまだソファに腰掛けていた。


「良いんすか〜?あんな言い方しちゃって〜!
飛段さん、アレ絶対怒ってますって。
マジでデイダラ先輩呪われちゃいますよ(笑)」


そう言いながらも、どこか面白がっているのが分かる。



「良いんだよ。
たまにはあれくらい言ってやる方が。
それに、言い出しっぺはトビ!
お前だろ!?全く。」



そう言ってトビを睨んだ。



「えぇ〜!?そ、そんなぁ〜。
それに乗っかったのは先輩でしょ〜?」



「そもそも、お前はいつも一言多いんだよ!
それにだ・・・」


トビから手元の粘土へと視線が移った。


「オイラ達“暁”に女なんて無縁の話しだしな、うん。
ここに入ると決めた時から、そういうもんとはおサラバよ。」


そう言いながら、ゆっくりと重ね合わせている手を広げると
そこには見事な蝶々が出来上がっていた。

デイダラの手からヒラヒラと飛び立った蝶は、アジトの中を優雅に飛廻る。


いつもながら器用に作るなぁ。
その様子に見入っていると


「だから、お前もいい加減。
そんな寝言みたいな事、言うのはやめろ・・・うん。」


ハッキリと、そして何かを諭すかのような口調で言った。

もちろんそんな事で大人しくなるトビでは無い。



「じゃあ〜こんなむさ苦しい中で、何を楽しみに生きて行けば良いんすか?(泣)」


まだ、諦めないトビに少し苛立つデイダラ。


「知るか!そもそもおめーは何の為に暁に入ったんだよ!?」


痛い所を突かれてしまった。
その様子は大人しくなったトビを見れば面を被っていてもよく分かる。




「そんな事より、オイラはもっともっと高みを目指して一瞬の美を追究するまでよ、うん。

一瞬で儚く散る事こそ最高の美!

その為にも、この暁に居るのが一番俺にとって都合が良いってわけよ。」



嬉しそうに話すデイダラを見ながら、トビは思った。



”飛段さんに宗教オタクって言ってたけど、先輩だって芸術オタクだよなぁ〜。
あんまり人の事言えないんじゃあ・・・“


「あぁ!?お前今何考えてる?人の話聞いてるのかよ?」



「き、聞いてます!聞いてますって〜(汗)
もう、先輩ったら〜アハハハ。」



絶対聞いてなかったな。
この野郎。


何だか色々と疲れた。
ダルいな。


そう思うと、天井を見ながら、ゆっくりと目を閉じた。




まぁ、こんな奴に言ったって無駄だろうが。
暁でこの繊細な美が分かるのはサソリの旦那ぐらいのもんよ。
まぁ、旦那とも芸術の方向性は違うがな、うん。
それにここに身を置く事が自分の為だと思っている。
普通じゃあ出来ない、更なる爆発の技術を向上させる為にはな。

まぁ、ありえね〜だろうが、万が一この美を理解出来る女が居るとすりゃ〜。
どんな奴か見てみたい気もするがな、うん。




眠そうに目を閉じたデイダラに安心したのか、トビがこんな事を言い出した。


「でも、人生まだまだ長いんだし、何があるかなんて分からないもんですよ〜。
案外、出逢いなんて思い掛けない所に転がってたりするもんですって(笑)
明日の事なんて誰にも分からないんですから。」



トビが話終わると、ゆっくりとデイダラの目が開いていった。


もう話に興味が無くなったのだろうか、その眼はどこか諦めたような、そんな感じがした。・・・

そして、


「んなもん、現実にはなかなか起こらねぇよ、うん」





そう言うと、アジトの片隅で小さな爆発音が聞こえた。


トビがそこに目をやると、残骸の中に1枚の蝶の羽根が落ちていた。



美しく舞っていた、あの蝶はもうそこにはいない。

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