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□待ち続けたクリスマスの終わり
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■海馬くんEND.
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僕以外、誰も居なくなったその場所に響く足音。
「…………気がすんだか?」
期待と諦めを込めて振り返ると、不機嫌そうに顔を歪めた海馬くんが居たい。
「もう、充分だろう……」
海馬くんは雪を払いながら、僕を自分のコートの中に抱き寄せた。
君とは違う 、大きくてたくましい身体。
大人の男の人の身体だ。
「サンタクロースなんて非科学的な物は居ない」
「……そうだね。海馬くんの言う通り、サンタクロースは居なかったよ」
僕は海馬くんのシャツを掴みながら、言葉を続ける。自分で自分にけじめをつけるために。
「でもね、でも……信じてみたかったんだ。非科学的な物にすがりたいほど、僕は彼に会いたかったんだ。もう一度。それくらい彼が…………好きだったんだ」
君への想いはいまも変わらない。
変わらないけど、もう、過去にしなくちゃいけない。
「お前が奴を忘れられないのも、忘れたくないのも知っている」
「……うん」
「だからお前はそのままで良い。無理をするな。俺はそのままのお前が好きだ」
「海馬くん……」
海馬くんの大きな掌が、僕の頬を撫でる。涙の跡を拭うように。
「名前で呼べ、遊戯」
「セト……くん?」
「俺が居る。直ぐに奴よりも俺の方が良くなるさ……だから安心してお前は甘えていれば良い。俺の腕の中で」
「なぁにそれ?すんごい自信。でもってすんごくキザ……でも、セトくんらしいね」
セトくんの、大きくて暖かい優しさに、僕の心と身体は溶けて行く。
永遠に叶わぬ恋の痛みと悲しみも、全部全部混ぜこぜにして……。
終える事のできぬ片想いのその横で、きっと僕はセトくんに恋をする。
人生で二度目の恋だ。
この恋はーーもう会えぬ君からの、最初で最後のクリスマスプレゼントなのかもしれない。
クリスマスはもう、過ぎてしまったけれど。
「……遊戯、これからは、欲しい物、叶えたい事は俺に言え。俺だけに……俺が全部叶えてやる。サンタクロースなんて非科学的だからな」
「クスッ。そうだね、これからはそうするよ」
「じゃあまず始めに、何が欲しい?言ってみろ。クリスマスプレゼントにくれてやるぞ」
「そうだなぁ……じゃあ取り敢えず、暖めて貰おうかな。寂しくて悲しくて、凍えそうなんだ僕」
戸惑い気味に交わす、始まりの口付け。
君からのクリスマスプレゼントを胸に、僕は僕だけのサンタクロースにその身を委ねて甘えることにした。
ーー『君の』、『お前の』
幸せを、永久に願う。
愛する貴女に 、メリークリスマス&ハッピークリスマス。