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□実らなかった初恋
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■花火恋しやボクの林檎飴(表くんside)
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同じ童実野高校という名前でも、君は公立、ボクは私立。

友達の多くが同じ高校に進学した君とは違い、ボクは一人、知らない人だらけの高校生活。

君の事を、ちゃんと思い出にするために選んだ寮生活。
慣れない事ばかりで大変だけど、それなりになんとか忙しく、充実した毎日を過ごしている。
君の方はどうなのかな?


「貴様、決闘に興味があるのか?」

「海馬くん?」

「どうなんだ……」

「えっと、良かったら決闘する?」


休み時間に月刊デュエルを読んで居たら、同じクラスの海馬くんに話しかけられ、決闘をしたらそのまま興味(関心?)を持たれた。

海馬くんは君も大好きなカードゲーム、M&Wで有名な海馬コーポレーションの社長さんをしていて、少し変わった人だけど、年の離れた弟の木馬くんをとても可愛がっている根は優しい人。
後、ブルーアイズに対する愛情が半端ない。

海馬くんは忙しい人なので、ボクの都合はお構い無し。毎回自分の都合で決闘を申し込んで来るので、それを断るボクとの追い駆けっこは、もっぱら恒例行事となりつつある。

そのせいなのか、校内ではボクと海馬くんが付き合っていると思い込んでいる生徒がチラホラ居たりする。
思い込みほど宛にならないものは無いのにね。

カードの話しをしたり、決闘をしたり、時には勉強を教えて貰ったり……それなり親しくはしているけれど、本当にそれだけなんだよね。ボクと海馬くんは。

学校と寮の往復。
たまにクラスメイトと遊ぶ事もあるけれど、基本的に勉強と決闘だけの毎日。

始めは考え事をする余裕も無かったのに、慣れてしまえばそれまで。

参考書の問題を目で追いながら、あーでもない、こーでもないと言いながら、指先をノートの上に走らせては君の事を想う日々。

そこまで遠い距離じゃないのに、週末も試験休みも、ボクは家に帰る事が出来なかった。

杏子ほどじゃなかったけど、君の家とボクの家は近かったから。
偶然でも君に会うのが怖かったんだ。

ボクの家と君の家は家族ぐるみの付き合いだったしね。

そんなボクに、痺れを切らした杏子に無理やり呼び出されたのは、夏休みも半分が過ぎたお盆の頃。

気分転換だからと強制参加させられた夏祭り。そこでボクは君と再会した。

卒業式ぶりに会う君は、余り変わっていなくて、懐かしくてホッとした。

ボク達に気が付いた君が、話しかけてくれたけど、君は数人の女の人達に囲まれていて、それどころじゃなさそうだった。

中でも一際お洒落で綺麗な子が、君の腕に絡み付くように抱き付いていた。
きっとその子が、今の彼女さんなんだろうね。

君と君の彼女さんを見たボクの胸は、途端に苦しくなった。

ねぇ、いつになったらボクは、君を忘れられるのかな?

偶然通り掛かった獏良くんが、その場からボクを連れ出しくれなかったら、ボクはどうしていたのだろ……。

込み上げて来る涙を堪える事は出来なそうだったから、泣いて君を困らせたかもしれない。

人気の無い林の中、ちょうど始まった打ち上げ花火の音が、虚しく耳に響いた。

君と一緒に見上げていた、幼い日の花火が懐かしい。
君は今、誰と見上げているのかな……。

獏良くんがくれた、真っ赤な林檎飴。
君の目と同じ色の林檎飴。


甘いはずの林檎飴が、塩っ辛かったのは、なぜ……。


 

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