なしろぎ 小説

□愛おしい人
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ガラガラガラ
玄関の戸が開く音がする
時計は深夜の時間を指している、
こんな時間に来るのはだいたいあいつぐらいだ。

侵入者はトスン、トスンと、ちょっと重たい足音をたてつつ
僕の部屋に向かって来る。
そして、侵入者は部屋の前で止まった。
「赤ちん、ここ開けて?」
どうやら、僕の予想は当たったみたいだ。
「お疲れ様敦、まず玄関で呼んで欲しかったな」
部屋の戸を、開けると
そこには血まみれの敦がいた。
「だめじゃないか、今日もこんなに汚して」
僕は、敦の頬についた血を手でふきとると
敦はぶすっと頬を膨らませ、僕のそえている手を引きはがしてしまう。
「赤ちんが、汚れちゃうからダメ」
「じゃあ、今度はもうちょっと綺麗に殺さないとね」
「う〜ん、難しいよ〜」
「敦、僕の言う事は?」
「ぜった〜い!!」
「よし、敦は、本当に良い子だね」
ご褒美にと、血塗れの髪の毛を撫でてやり、
そしてまたぶすっとなる敦が可愛い。
「さて、敦は、お風呂に入ろうか」
「うん、赤ちんも一緒ね」
「もう敦は、しょうがないな」

こんな関係になったのは、丁度二年前の事だった、

敦は、かどなストレスを感じると人を衝動的に捻り潰してしまう体質で、
初めて衝動が出た時に、パニックになり、
たまたま通りかかった僕が、敦を保護をしたのが始まりだった。
敦に話しを聞いたところ、
物騒な男に路地裏に引っ張られ、長々と一方的に物騒な薬の説明を受け
イライラ衝動的に人を捻り潰してしまったらしい。

敦は、『俺、ちゃんと悪い所ないしいらないって言ったのに
全然話し聞いてくれなくてしつこかったから』
と、小さい子のように泣きじゃくりながら僕に訴えた、
その時は、普通の一般人では、無かった事にほっとした。

そして、僕はその姿に迷わず手を伸ばした。

その日は、取り合えず事件のもみ消し、警察への通報、
まあもろもろ面倒事を片付けにかかった。

そして、敦には、殺しても良い相手を与えるかわりに、
衝動がおさまった後、僕の家に必ず訪れる事を約束させた。

僕の家には、かよいのお手伝いさんしかいないので特に困る事は無かったし、
なにより血まみれの敦が、すごく可愛かったのがいけないのだと思う。

こうして、僕と敦の関係は成立した。

けれども、最近その衝動の間隔がだんだん短くなって来ているのが気になる。

二カ月に一回が、次は一カ月に一回になり、次に二週間に一回と、
いくら殺しても良い相手が、五万といるからと言って
ペースが縮まって良いわけではない

そろそろ話しをした方が良いかな?





赤ちんは知らない、
最初っから、俺が殺したいと思っているのは赤ちんだけだって言う事も、
そして、その衝動を抑えるために他人を殺している事も
赤ちんが、他人の血で、汚れるたびに嫉妬して殺したくなる事も
赤ちんが、血まみれになるのを想像すると興奮して殺したくなる事も
赤ちんが、笑いかけてくれるだけで、
嬉しくって殺したくなってしまう事も
それは、全部赤ちんが好きすぎて
してしまう行動だと言う事も赤ちんは、知らないだろう。

だから初めての時、保護してくれたのは予想外でこんなに
赤ちんとの距離が縮まるとは思っていなくて
そして、縮まるたびに殺したい衝動が強くなった。

だから、赤ちんを殺したい
けど、もっと甘やかして欲しから、どうしよう?





って思っている事を僕が知っているって事を

別に僕は、敦に殺されても良いし、
そう思われていても変わらずに甘やかしてやる事を

そろそろ言ってあげた方が良いかな?

敦は、うまく隠せてると、思っているかもしれないけれど

僕が何も知らないとでも思ってるの?

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