京都へ行こう

□8の1 八木邸、夕食
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野「芹沢さん、野口です。只今戻りました」

芹沢の部屋と思われる襖の前で野口は座り、声をかけた。
「入れ」と声が聞こえ、「失礼します」と野口が襖をあけた。
書き物をしていた様で、芹沢は筆を置き、姫を見た。

芹「おぅ。遅かったな。姫、腹は減らないか?」
姫「お腹??…聞かれたら急に減ってきました…。お昼ご飯も食べてない…」

ガハハッと芹沢は豪快に笑い、「飯だ飯だ!」と立ち上がり部屋を出た。
野口が「私達も行きましょう」と言うので付いて行った。
廊下を少し歩くとふわっと味噌汁のいい香りがした。
そして姫のお腹がグーっと鳴った。
姫は慌ててお腹を抑えるが、その音は野口や芹沢にも聞こえたらしく、芹沢には大笑いされ、野口も声を殺して笑っていた。
姫は自分のお腹を恨んだ。何もこんなときに鳴らなくても!!と、思うがやはり空腹には逆らえない。

姫「考えたらおにぎり1個しか食べてなかった…お腹減った…」
芹「何っ!?それは早く食べた方が良い!握り飯1つじゃぁ話も出来ん!」

スパンッと勢いよく襖を開けるとそこにはご飯が用意されていた。

姫「わぁぁっ!凄いっ!!美味しそうっ!!」

天ぷら、お刺身、ホカホカのご飯とお味噌汁。姫はまたグーっとお腹を鳴らした。

芹「わはははっ!姫!さっさと座れ!!腹の虫が喧しく騒いでいるぞっ!」

芹沢は自分の隣に姫を座らせ、野口はその隣に座った。
「いただきまーす!!」と手を合わせてから、お膳を前にパシャッと写真を撮った。

芹「それはなんだ?」
姫「未来のほとがらです」

そして姫は「ん?」と首を傾げた。
LINEの新着知らせの横には圏外のマークが表記されていたが、空腹の姫は考えるのを止めた。そして新着のLINEを見た。
口元を抑え、突然ニヤニヤと笑う。
眉を潜めた芹沢が姫からケータイを奪うと画面を見た。

芹「なんだこの箱は。…近藤じゃねぇか。なんだ姫、こんな男が良いのか?顔なら土方の方が良いだろ」
姫「いくら顔が良くても土方さんはちょっと…私は近藤さんの方が良いです。あいつら近藤さんのこんな笑顔の写メ送ってくるとは…」

笑っている芹沢からケータイを受け取り、文を読む。

芹「文字が書いてある」
姫「あー…っと、手紙?文?も、ほとがらもケータイから送れるんですよー」
芹「けーたいと言うのか!未来は便利になったんだな!」

LINE 姫
ご飯なう。
めっちゃ美味そう。
近藤さんヤバイ!!こっちこそありがとう!!


姫はLINEを打ち終えると野口を見た。
視線に気付いた野口が複雑そうに笑った。
姫は疑問に思ったが野口が「ご飯が冷めてしまいますよ」と言ったので、箸を手に持った。
カリッとした衣の天ぷらを箸でつかみ、天つゆへ入れる。

姫「んー!!サックサク!!おいしぃぃ〜!」

満面の笑みでそう言った姫に、芹沢は満足そうに笑い、お猪口を差し出しながら言った。

芹「酒は飲めるのか?」
姫「頂きます!!」

受け取ったお猪口をグイッと飲んだ。
「ほぅ」と芹沢が漏らし、徳利を姫に出した。

姫「いえっ芹沢さん!私に注がせてください!!」
芹「はははっ!では頼むか!」

芹沢の持っていた徳利を受け取り、新たに持ったお猪口へ注ぐ。
芹沢は美味しそうに飲んだ。

姫「芹沢さんカッコいい…セクシー…」
野「せくしぃ?」
姫「何て言うのかな……色っぽいっていうか、艶っぽいっていうか…」

姫の発言にその場にいた芹沢以外の全員が噴いた。
平間は食事が変なとこに入ったのだろうかゴボッゴホッと激しく咳き込んでいる。
芹沢は更に機嫌が良くなり、姫の頭をわしゃわしゃと撫でた。
その後もワイワイと食事は進み、いつの間にか宴会と化していた。

姫「芹沢さんっ!私、我慢できません!!」

突然姫がそう叫んだ。皆の視線を浴びた姫はまたもや口を開く。

姫「その姿写メって、あ、ほとがらって良いですか!?素敵過ぎて鼻血出そうっ!!」
芹「おぉ!撮れ撮れ!!」

姫はあっち角度、こっちの角度と芹沢を撮りまくった。

新「ほとがらって良いですか。ってなんだよ」
平山「なんだ新見、面白く無さそうだな?

新「芹沢さんもあんな奴に構って。煩くて食事にならん」
平間「なんだ?嫉妬か?」
新「なんだとっ!?」

突然立ち上がった新見に視線が集まる。
新見は「チッ」と舌打ちをすると部屋から出ていった。

姫「なんだぁ??」
平間「姫さんに嫉妬したんですよ」
姫「嫉妬?」
平間「アイツは芹沢さんが好きだからな」
芹「けっ!男に好かれても気色悪いだけだ。俺に男衆の気はない!」

グイッと酒を仰ぐ芹沢。明らかに機嫌が悪くなっていた。平間は姫に苦笑いすると肩を竦めた。

姫「流石芹沢さんっ!きっと新見さんは芹沢さんを尊敬しているんですね!男から見ても魅力的だなんて、局長冥利につきますね!!」

姫の言葉に芹沢はピクッと眉を動かした。

姫「私に嫉妬なんて、新見さん可愛いとこあるんですね〜。追い掛けて慰めてあげよ」
野「姫さん…顔が笑っています」
姫「もー野口さんたら!からかうのは土方さんだけにしておきますよ!」
野「ダメです」
姫「もぅ野口さんたらっ!乙女の気持ち解ってくださいよー。トイレですよ、ト・イ・レ」
野「といれ?」
姫「えーと…お手洗い?厠?」
野「かっ…かわっすいません!どうぞどうぞ!!」

姫はニッコリ笑うと部屋から出て行った。
姫はウロウロと歩き回り、縁側に座る新見の姿を見付けた。声を掛けようとした瞬間新見が振り返り姫は驚いた。新見は「なんだ」と言うとまた庭を見た。

姫「新見さーん、厠ってどこですかー?聞くの忘れて出てきちゃったんですよねぇ」
新「…」
姫「新見さーん、厠ってどこですかー?ここで漏らしちゃいますよー」

無視する新見に姫は聞き続ける。

姫「新見さーん、新見さーん、新見さーん、漏れちゃう〜教えてくださいよー。新見さーん、新見さーん、新見さ「うるさい!厠ならそこを左だ!!」

自分で無視してたくせに。そう思いながら姫はトイレへ行った。トイレから出てくると新見の姿がまだあった。

姫「あれ?新見さん戻らなかったんですか?」
新「煩い奴だな!ちょっと芹沢さんに気に入られてるからって調子に乗るなよ!芹沢さんは優しいから誰にでも優しくするだけなんだからな!!」
姫「わかってますよー。…あー…酔い覚めてきた。ほら新見さん!行きますよ!」

グイッと新見の腕を引っ張る。
「何をするんだ!」とそれを振り払う。その姿に姫は真面目に答える。

姫「新見さん来なきゃ場所が解りません!!」

ズルッと新見が滑った。

新「そんな真面目に言うことじゃないだろ!?」
姫「えー。新見さんお願いしますよー。新見さん新見さん新見さんにい「解ったよ!うるさいなっ!!行けば良いんだろ!?」

姫の煩さに負けて新見は縁側から立ち「ウロウロ出てきたと思ったらやっぱりか」と言った。
姫はニッと笑いながら「新見さん優しー!」と返した。

姫はニコニコと笑いながら新見の後を付いて行き、芹沢達の声が聞こえると新見と腕を組んだ。

新「!?ばかっやめろ!!」
姫「あらー!?どうした事でしょう!!腕がくっついて離れません!!」
新「なんだよその棒読みは!?良いから離せっ!!」

新見はグイグイと腕を引っ張るが姫は離れようとしない。
2人の騒いだ声は芹沢達の部屋にも聞こえ、野口が襖を開けた。
そこには姫に腕を掴まれ、必死に逃れようとする新見の姿があった。

新「!!野口っ!コイツなんとかしてくれ!!」
野「ひっ姫さん!何してるんですか!!」

野口の問い掛けに姫はしれっと「新見さんと腕が離れなくなりました」と笑った。
それに野口は呆れ、芹沢達は笑った。

平間「それは大変だ。新見、姫さん、早く入りなさい」

平間が2人を中に入れ、野口が襖を閉めた。

平山「引っ張っても離れないなら…」
芹「…切るか」

と、芹沢が刀に手を伸ばす。チャリッと音が聞こえた瞬間、姫は腕を離した。

姫「あらー、刀の音が鍵だったんですね!良かったですー!芹沢さんありがとうございましたぁ!!」

と言いながら野口の後ろに隠れた。
その姿に全員は大笑いしたが、野口だけは溜め息をついていた。
新見も戻り、宴会は続いた。
姫はパシャパシャと写メり、気に入ったのが撮れると麻希と来弥に送った。
辺りはすっかり暗くなり、月明かりが縁側を照らした。



8の2 屯所、お風呂
9の1 八木邸、お風呂
9の2 屯所、夕飯

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