京都へ行こう

□6 バッグがない!
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一通り話し終った3人は襖を開けた。
そして3人は固まった。

麻「外にいる誰かって…」
姫&来「居過ぎでしょっ!!」

何故か沢山の隊士達が庭らしい所に集まっていた。
皆が一斉に3人を見た。

来「お…男ばっかり…」
麻「ない…これはない…」
姫「ちょっと…引くわ…」

声を掛けようにも沢山居過ぎて誰に声を掛けたら良いのかわからず、一度襖を閉めようとしたところへ一人の隊士が声を掛けてきた。

原「終ったのか?」
来「あ、はい…原田佐之助!!」
原「覚えてくれたみてぇだな」

原田はニカッと白い歯を出して笑った。
それを3人はまじまじと見る。

原「…な、なんだぁ?」
来「い…イケメン…」
麻「これは…イケメン…」
姫「噂通り…」

佐野を囲み3人は頷く。

原「いけめん?なんだそりゃ」
姫「カッコいいってことです」
原「おっ!なんだ、分かってんじゃん!」

褒められたと解った原田はニコニコと返す。そして「誰か近藤さん呼んできてやって」と庭にいる隊士達に言った。
そして3人に部屋へ戻るように言った。
3人が部屋へ戻ると原田も一緒に入った。

麻「あ!原田さん!私の傍にバッグ落ちてませんでしたか?」
原「ばっぐ??」
麻「えっと…鞄?です。ヴィトンのなんですけど…」

「これくらいの」と、麻希は手で大きさを作った。

原「びとん??かばん?ブタの皮か?」
姫「…マジか…」
麻「バッグってなんて言うの?」
来「入れ物?巾着…は違うか」
原「何色なんだ?」
麻「えっと…ベージュ…薄い茶色に、黒の模様の…」

ヴィトンが薄い茶色…言っていて3人は悲しくなった。
未来では高級ブランドのバッグも、過去に来たら何の価値もないのだ。

近「やぁ。話は終ったかい?」
姫「!はい。ありがとうございました。」

突然入ってきた近藤にニッコリと笑いながら姫は近藤にお礼を言った。

近「そうか。それは良かった」

近藤もニコニコと笑顔を返す。

姫「……ダメだ…原田さんごめん…私には近藤さんの方がイケメン…鼻血出そう…」

「いけめん?」と首を傾げる近藤を横目に、姫は隣にいた来弥に抱き付いた。

原「お前失礼な奴だな!!」
来「鼻血はまずいしょ(笑)」
山「おや、原田さんもう仲良くなったんですか?」
原「山南さん。なんかコイツがブタの皮見てないか?って」
山「ブタの皮?」
麻「ヴィトンの鞄です…」
山「びとん?外国の言葉かな…」
麻「これくらいのバッグなんですけど、中に小物とか必要なものいっぱい入ってて!私達と一緒に落ちたから、もしかしてあるかもって思って!!」

麻希は必死に伝える。
その様子からは大切な物が入っているということがわかる。

近「ばっぐかどうかは解らんが、君達がいた傍にあったそれくらいの珍妙な箱ならあるぞ」
姫&来&麻「見せてくださいっ!!」

近藤が言い終わるや否や返事をする3人の勢いに、その場に居た全員が目を丸くした。他の2人にも大切な物なのだろうということが容易に想像できる。

近「トシ、持って来てもらえるか?」
土「あぁ」

土方が立ち上がると直ぐに隣に座っていた野口も立ち上がった。

野「土方さん。僕も手伝います」
土「あぁ…悪いな」

土方と野口が部屋から出ていった。
3人はバッグがあるということが嬉しかった。

姫「私達のバッグかな!?」
来「そうだと嬉しい!!」
麻「あるかなー!?」

3人がキャッキャッと嬉しそうに話しているのを、近藤と山南は微笑みながら見ていた。

来「…ごめんなさい。煩かったですか?」

視線に気付いた来弥が近藤と山南に聞いた。

山「いえいえ、聞いているこちらが元気になりますよ」
近「楽しそうで何よりだ」

近藤達はハハハッと声を出して笑った。

?「近藤さん、只今戻りました」

襖の向こうから声がした。

近「ご苦労。入れ。」
?「はい」

いちばんたい?と首を傾げる3人は、入ってくるであろう人物を襖越しに見た。
襖は開き、スラリとした長身の男が立っていた。

姫「沖田総司…」

姫の言葉に全員が姫へと視線を移した。
調度戻ってきた土方と野口も、姫の言葉を聞いた。

土「総司、知り合いか?」
沖「やだな土方さん。土方さんじゃあるまいし」

沖田は土方の方を向いて笑いながら話す。
姫と同じ臭いがする。咄嗟に麻希と来弥はそう思った。
そして3人は「沖田」と言った男を凝視した。

麻「沖田総司…」
来「この人が…」
沖「何ですか?私のこと知ってるんですか?」

3人は沖田を黙って見ていた。
そして初めて沖田が持っていた物に気付いた。

麻「私のバッグ!!」
沖「??これですか?貴方達が倒れていた所に落ちていたんです」

麻希は立ち上がり、沖田からバッグを受け取った。

麻「よ…良かったぁぁぁっ!!ありがとうございます!!」

沖田は困ったように笑いながら半泣きの麻希を見た。


近「まぁ中に入りなさい。トシ、荷物はあったか?」
土「あぁ。持ってきた。」

今まで影で隠れていた土方と野口も部屋に入る。

姫「私のバッグ!!キャリーも!!」
来「凄い!嬉しい!!」

きゃぁきゃぁと騒ぐ3人に苦笑いしながら、山南は話を進める。

山「沖田くんも戻ってきた事だし、改めて自己紹介をしましょうか」
近「そうだな。皆、座ってくれ」

奥から山南、近藤、土方、野口が一列に座り、襖の前に沖田が座った。
沖田に対峙するように奥に原田が座る。
そして近藤らに向かい合うように奥から、来弥、麻希、姫が座った。

近「改めて自己紹介をする。私が局長の近藤勇だ」
山「副長の山南敬助です」
土「同じく副長の土方歳三だ」
野「副長助勤の野口健司です」
沖「沖田総司です」
原「原田佐之助だ」
姫「沢名姫です」
麻「藤井麻希です」
来「橋田来弥です」

名前を言い終わった所で近藤が尋ねる。

近「28歳と言ったか」
麻「あ、はい。でも16くらいだと思います」
来「中身は28、外見は16の様で…」
姫「見た目は子供、頭脳は大人…」

某アニメの様な台詞に3人はブハッと吹いた。肩を震わせ必死に笑いを堪える。
怪訝な顔をした土方が口を開く。

土「歳の割に落ち着きがねぇな」
姫「歳の割に細けぇな…」

姫は小声で言ったつもりだったが、2人には聞こえた様で俯いて笑っている。
その声は原田にも聞こえた様で、肩が震えていた。

土「おい、人の話はちゃんと聞けと習ってないのか?」
姫「今度は土方さんの話す番ですか?話すならきちんと聞きますよ。」

姫がニコニコしながら土方を見ている。

姫「何故こうなったかは分からないですけど、実年齢は28です。でも気持ちと見た目は16歳なので16歳で通したいと思いますっ!!」

姫は右手でガッツポーズを取り、目を輝かせて言い切った。
「はははははっ!!」と、大きな笑い声で近藤は笑った。土方を除いた他の男達も笑っている。

麻「いや!無理でしょ!気持ちは常に16だけどっ!!」
来「肌とか艶々してるし16が良いけどっ!!」
姫「ならいっしょ!!私達16歳ですっ!!」

麻希と来弥に突っ込まれながらも姫はキラキラと目を輝かせる。
土方は更に呆れた顔をした。

近「いやいや、結構結構!16歳という事にしよう!その方が華もあるしな(笑)!!」
土「近藤さん…笑いすぎだろ…」

実際この場にいた中で近藤が一番笑っていた。腹を抱え、目に涙を溜めて笑っていた。

姫「私達が16だとダメなんですか?実際この時代のこと解らないし、28で知らない方が無理あると思うんですよね。16くらいなら「どっかの田舎から出てきた」で済むと思うんですよ。それに見た目と年齢のギャップ…差がありすぎると、それこそ問題だらけになると思いませんか?土方さん」

と、捲し立てるように土方に問いかけた。

山「…そこまで考えていたんですか…?」

土方に聞いたはずが、山南が反応した。

姫「え?そうですけど…」
土「確かにお前の言う事は一理あるな。実年齢は伏せておき、隊士には16で通そう。近藤さん、良いか?」
近「そうだな。そうしよう。姫さん、君はなかなか賢いようだな。流石28歳というべきか?」

姫が「えへへ」と照れ笑いすると、土方は姫を見て「ふっ」と笑った。

姫「…何ですか?」
土「いや?そうしてりゃ16に見えるなと思っただけだ」
姫「…土方さんは歳の割におじさん臭いですね。まるで頑固ジジィです」
土「お前っ!本当に失礼な奴だな!」
沖「土方さん、16から見たらジジィですよ」

沖田が我慢出来ないとばかりに口を挟む。

土「お前は黙ってろ」
沖「姫さん、頑固は当たってると思いますよ」
姫「ですよねっ!?ホンットムカつく。偉そうにネチネチネチネチ…餅かっつーの!」
沖「餅?」
姫「くっついたらベタベタ取れない。いつまでも絡んでくる」
沖「上手い!でも餅に失礼ですよ。美味しいですから。土方さんじゃ不味くて喰えません」
土「お前等ぁっ!!」
沖「あ、怒った」
姫「餅破裂しましたね。焼きすぎました」

沖田と姫が土方をからかっている様子を、麻希と来弥はオロオロしながら見ていた。
こうなった姫は手がつけられない。相手が怒るのが楽しくて仕方ないのだ。
どうして良いか解らず、来弥は原田をチラリと見た。が、原田は顔を背けて笑っていた。
当てにならない原田に麻希は溜め息をつき、山南を見た。
山南までが笑っているのはきっといつもの事なのだろうと思った。
ただ、今は姫がいる。皆腰に刀を差している。麻希は心配でならなかった。
麻希の視線に気付いた山南は麻希と目が合った。
麻希の表情は不安に駆られていた。
そんな麻希を可哀想に思い口を開く。

山「おや、もうこんな夕暮れだ」

山南の言葉に皆は襖の方を見た。
襖越しにでも解るほどの朱色が障子には映っていた。

近「本当だ。長い間済まなかったね。話はまた明日にしよう。八木邸は近いが明るい内に行った方がいい。野口君、頼む」

野口が「はい」と言うと立ち上がった。

野「姫さん、行こうか?」
姫「あ、ちょっと待ってください」

すると姫は自分のバッグを開け、ケータイを取り出した。

姫「記念に写メっとこ!」

麻希と来弥はニッと笑うと、それぞれのバッグからケータイを取り出した。
3人は自撮りの要領でそれぞれ3人の写真を撮った。

「あ」と、姫は来弥にケータイを渡す。

姫「これから八木邸に行きます記念!野口さんと2ショット撮って!」
来「おっけー!」
麻「野口さん、寄って寄って!」

訳も解らず言う通り姫に寄る。

来「はい、撮るよ〜。野口さんも笑ってくださーい!はいっチーズ!」

パシャッと機械音が響き、姫はケータイを受け取った。そして自分のバッグを肩からかけ、キャリーを持った。

姫「行ってきまぁす!何かあったら連絡するし、連絡してね!」

笑いながら明るく出て行った姫に、麻希と来弥はこれからの不安のせいか手を握り合い、姫が出て行った襖をじっと見つめていた。



7の1 姫、八木邸へ
7の2 麻希と来弥と屯所

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