京都へ行こう

□4 お世話になります
1ページ/1ページ

芹「うるせぇっ!!!」

3人が黙り混む。
姫「芹沢さん。私の話を聞いてください。麻希も、来弥も。これから私が話すことを。全て嘘に聞こえるかも知れませんが、真実を話すと誓います」

芹「…良いだろう。話せ」
姫「ありがとうございます。……私達は…151年後の、未来の日本から来ました」

それから姫は、北海道から京都へ旅行に行ったこと。清水寺から落ちたこと。気付いた時はここにいた事。
芹沢達は黙って姫の話を聞いていた。
そして姫が話を終えた。

芹「未来から来ただと…?それを証明するものは?」
姫「芹沢鴨さん…貴方はいつも鉄扇を持っているはずです」
芹「ほぅ?」
姫「先程原田と呼ばれた貴方は、原田佐之助さん」
原「!?」
姫「芹沢さんのお隣の方は局長の近藤勇さん。眼鏡の方は山南敬助さん。…貴方は土方歳三さん…。平山五郎さん、平間重助さん、野口健司さんは、お顔が解らないので何方かはわかりませんが、年齢から見て間違いないと思います」


部屋にいた誰もが口を開かなかった。
麻希と来弥も黙って姫を見つめていた。
姫は幕末が好きで、凄くとまではいかないが、そこそこ詳しかった。姫が京都に行きたがった理由の1つに新撰組の屯所を見たいというのがあった。

ふと来弥は気付いた。

来「近藤勇?土方歳三?」

名前を呼ばれた2人は来弥を見た。

来「姫、近藤勇と土方歳三は新撰組じゃないの?」
姫「同じだよ」

来弥の記憶では〈芹沢鴨〉なんて新撰組では聞いたことのない名前だ。
来弥は首を傾げる。

姫「後で詳しく話すから」
土「今話せ」
姫「…お断りします。これは未来の話ですので」
土「そんな話信じられるわけねぇだろ」
姫「、」
土「残念だったなぁ…?」

目が笑わないまま、土方は笑った。
そんな土方に姫はニヤリと笑った。
麻希と来弥が凍りついた。
姫のあの笑顔は完全にターゲットを決めた目だ。
ヤバい。と2人は思った。

姫「土方さん。土方さんは花がお好きなようですね?」

土方は怪訝そうな顔をした。

姫「…君菊さんはお元気ですか?」
土「!?」

姫がニッコリと聞いた。
目を開かせた土方に姫は続ける。

姫「お琴さん…待っているでしょうね…?」


ニヤリと意地の悪い笑顔で土方を見た。
君菊とは土方が贔屓にしている舞妓。
お琴とは土方が故郷に残してきた許嫁だ。

麻「やってしまった…」
来「女関係まで覚えているとは…」

そう。姫は土方が気に入らなかった。元から気に入らなかったわけではなく、今が気に入らなかったのだ。

近「なんと…」

土方と同郷である近藤までも驚いた。

芹「あーっはっはっはっはっ!!!面白い!面白いぞ小娘!!」

突然芹沢の豪快な笑い声が響いた。

芹「おい、お前等。未来からきたというのを信じてやろう。そして未来に戻るまでここに居たら良い。歓迎してやろう!」
近「芹沢さんっ!」
姫「お願いします!!私達行くところがないんです!!少しで良いのでお願いします!!」

姫の勢いに負けた近藤は芹沢を見た。

芹「好きなだけいろ。3人共八木邸へ来い。」
近「芹沢さん!それでは貴方の負担が多すぎる!!こちらでも引き取ります!!」
芹「ならば小娘達に選ばせてやる。どうする?…あ、おい。お前。」

芹沢は姫を指差した。

姫「はい 」
芹「お前はこっちに来い。命令だ。他の2人は好きなようにしろ。」
姫「…はい。わかりました」
来「私も姫と一緒に行く!」
麻「私も!」
芹「嫌われたもんだなぁ?近藤」

クックッと喉で芹沢が笑った。

近「しかし芹沢さんそれ「いえ、麻希と来弥は近藤さんにお願いします」

麻「ちょっと!姫!!」
来「なんで!?」

近藤の言葉を遮り姫は言った。
それに麻希と来弥が反応した。

姫「ちゃんと話す!ちゃんと話すから!!」

そして芹沢をチラリと見た。

芹「…少し3人で話させてやれ。小娘共、変な真似はするなよ」

芹沢はギロリと3人を睨んだ。

来「小娘小娘って…私達28ですよ!オバサンですよ!」
芹「あぁ?お前等のどこが28なんだ?どう見ても15、6だろ。立派な小娘だ」

3人はポカンと口を開けた。

姫「15、6?」
麻「いくらお世辞でもそれはない」
来「…でも言われてみれば姫も麻希も若い…」

3人は顔を見合せた。

姫「…若返ってる…?」
来「何で?何のために?」
麻「ヤバいって!うちらヤバいよ!目が覚めたら151年前で、しかも若返ってるとか!!」
来「漫画でしょ!」

漫画…3人はまさに漫画にありそうな立場にいた。

姫「と、とりあえず整理しながら少し話そう」
麻「そうだね…このままじゃ埒があかない」
来「ドキドキしてきた…」
姫「今更!?」

3人は黙ったまま顔を見合せた。

芹「おい。こっちに来るのは姫だけで良いのか?」
姫「あっはい!お願いします!近藤さん、2人をお願い出来ますか?」
近「勿論だ。君にも後で詳しく話を聞かせてもらいたい。」
姫「はい。宜しくお願いします!!」

姫は芹沢と近藤に頭を下げた。
それを見て芹沢は満足そうに席を立った。

芹「先に八木邸へ戻る。野口、後で姫と一緒に戻ってこい。」

野口と呼ばれた男は「はい」と返事をした。
そして芹沢は部屋を出た。

近「姫さん、頭を上げてくれないか?」

頭を下げたままだった姫は、近藤の言葉に恐る恐る顔を上げる。

姫「っ!」

優しげな笑みを浮かべて近藤は姫を見ていた。


近「君は友人が大切なんだな。よく伝わるよ。しばらく3人で話すと良い。私達も部屋を出る。話が終わったら外にいる隊士、誰でも構わないから声を掛けなさい」
姫「……」


姫は無言のまま近藤を見つめた。
近藤は「皆出るぞ」と隊士達を連れて外に出た。
最後に3人を見てニコリと微笑んで襖を閉めた。

部屋には姫、麻希、来弥が残った。




5 いつもの3人

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ