京都へ行こう

□11の2 八木邸、おやすみ(会話、姫視点)
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野「…姫。そんなとこしゃがまないの」
姫「余計なこと言って」
野「余計なことって?」
姫「土方さんに言ってた」
野「本当の事だろ?」

なんでこの人はこんなに言い切れるのかな。
野口さんより私の方が…なんてこと、あるわけないのに。

姫「…麻希と来弥最後笑ってたね」
野「そうだな。ほら、帰ろう」
姫「うん」

野口さんが手を出してくれて、私はその手を取る。

野「姫、俺を頼ってくれて良いんだよ」
姫「頼ってるよ」

こんなに頼ってるのに、危ないからって傍にいてくれてるのに。

野「不安だろ?」
姫「平気」
野「すぐ強がる」
姫「そんなことない」
野「…泣いて良いんだよ」

私のせいなのに、泣いてられないよ。

姫「泣かない」
野「姫は強情だな(笑)」
姫「…」
野「…姫?」

このまま一緒に居たら泣いちゃうよ。
これ以上迷惑掛けられない。
もう掛けたくない。

姫「…少し散歩する」
野「ダメ。危ないよ」

ただ一人になりたいだけなのに…

野「一人になんてさせてあげないよ。…縁側に行こうか」
姫「…うん」

何でわかるかな?
野口さんが笑顔で言うから頷いちゃったよ…
たった数時間だけなのに、この人はどれくらい私の事を知ったんだろう。
そんなに私、顔に出てるのかな?

野「姫、甘えて良いよ?」

こんなに私を甘えさせておいて、まだこの人はそう言うの?どれくらい私を甘やかすの?

姫「大丈夫」

これ以上甘えるわけにいかない。

野「自分に言い聞かせてるんだろ?」

大丈夫。
そう思ってないと頑張れない。
だって麻希と来弥は…
私のせいだから…

姫「…私が京都に行こうって言ったの」
野「うん」
姫「京都に行かなきゃこんな風にならなかったのに」
野「でもそのお陰で姫達に会えた。俺は感謝してるよ」

何で感謝なんてするの?

姫「私達…戻れると思う?」
野「うん。戻れるよ。俺が手伝うから。…な?」

本当に戻れるかな?でも、野口さんがいうなら…

姫「…うん…」

ヤバいな…野口さん優しすぎて泣きそう…

野「姫…」

我慢できなかった涙が一滴溢れた。
それを慌てて手で拭った。

姫「泣かない。皆心配するもん」

そう言った私の頬を、野口さんほ優しくつねった。

姫「いひゃい」
野「うん。姫は今痛くて泣いてるんだ」

何でそんなに優しいの?甘えちゃうよ…
そんなに優しくつねって、痛いわけないのに。

姫「…痛い…痛いよ…」
野「ごめん」
姫「っ…くっ……ぅ…っ」

野口さんに抱き寄せられて、温もりが心地よくて…。私はなんてズルいんだろう。

姫「ぅー…っ……っ…」

暫くの間私は声を殺して泣いた。
何も考えられなくて、ただ涙だけが止まらなくて。
落ち着くまで野口さんがずっと抱き締めてくれてた。

姫「…ごめんなさい…もぉ、大丈夫」
野「つねったの俺だから。痛かったろ?ゴメンな」
姫「ちが「俺のせいだよ」…え?」
野「姫が泣いたのは俺のせいだから。ごめん」

そんな風に優しく頭を撫でないで。
…嫌だな…また泣きそう…
野口さんのせいになんてしたくないのに…

姫「ううん。ありがとう。もう寝るね」

あれ?私どこで寝るの?

姫「野口さん?私どこで…?」

あ。野口さん今「しまった!」って顔した。もしかして私寝るところなくない?
…もうその辺で寝ちゃおうかな。
暖かいし、大丈夫だよね。

野「…うん。姫、おいで」

野口さんが私の手を引いて立たせてくれた。
そのまま歩き出して、沢山並ぶ襖を1つ開けた。

野「俺の部屋。今布団敷くからそこで寝て」

野口さんが布団を出しながら言う。

姫「野口さんは?」
野「俺のことなら気にしないで」
姫「どこで寝るの?」

野口さんは優しい顔で笑った。
今日だけで何回その笑顔見たんだろう?

姫「ダメだよ。野口さんちゃんとお布団で寝て?」
野「良いから。…まぁ部屋にはいるけど、気にしないで良いから」

お布団を敷き終わった野口さんは、少し離れたところに座布団を丸めて横になった。

姫「そこで寝るの!?」
野「慣れてるから大丈夫」
姫「私がそっちに寝る」
野「女の子がこういう風に寝ちゃダメ」

野口さんは私に背中を向けたままそう言った。

姫「私の方が年上だし!」
野「姫、もう寝な?」

ズルい。絶対そんな言うこと聞けない。
私は布団に入らず、間に布団を挟んで野口さんとは反対に横になった。
野口さんは気付いてないようで、沈黙が続いた。
友達の家で飲んだ時は雑魚寝なんて当たり前だし。
私もう28だし!女の子ってなんだ!!
ちょっとだけイライラしながら横になってたらすぐに眠くなった。
さっき泣いたし、やっぱり何だかんだで疲れてんだなー。って半分寝ながら考えた。


…はっ。ちょっと寝てた!
あー…でも無理。眠い。もう考えるのやーめた。って言うか今何時?解んないけど寝よ。



あ。野口さん溜め息ついてる。
ふふふ。
眉間に皺寄ってる。
あれ?私今何処にいるっけ?
野口さん私の事抱っこしてる?
あれ?

姫「野口…さん…?」
野「…起きちゃった?ちゃんと布団で寝なきゃダメじゃないか」
姫「んー…」

夢?現実?
眠くてそんなのどうでも良くて、でも野口さん暖かいし、何か気持ちいいし…
…離れてほしくないな…

野「…姫、ちゃんと寝て」
姫「野口さんも…一緒に寝よ」
野「!?」
姫「眠い……」
野「…ったく…」

離れないと動けないでしょ。って言われた気がしたけど、心地よくてそのまま寝た。

野「おやすみ…姫」


11の1 屯所、おやすみ(会話)

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