DREAM〜弱ペダ短編〜

□Valuable
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ここは箱根学園自転車競技部の部室。
日々、ハードな練習が行われ、緊張した雰囲気が漂っている。
昨年はインハイ準優勝で終わった為、今年はより一層気合いが入っている多くの個性的な部員を纏める者の苦労は計り知れない。



「「黒田さん、おはようございます!!」」

雪「…」

「「…?」」

山「黒田さん、どうしたんですか?元気無いですけど。」

雪「…何でもねぇよ。」



そんな中、この部の副部長を務める黒田雪成の様子がおかしい。



山「そう言われてもなぁ。」

悠「…あ、良いこと思い付いた。」

山「え、教えて。」





コンコン

『失礼しまーす…ユキ?』

雪「名無し!?」

男子しか居ない部室にひょこっと顔を覗かせた彼女は黒田の恋人だ。

『何かユキの様子がおかしいって聞いて…。』

名無しの後ろには不自然に目をそらす真波山岳と新開悠人。

雪「ハァ…何でもねぇから。」

『…ジー…』

雪「?」

『…ユキ、熱あるでしょ。』

拓「ユキちゃん、熱あるの!?」

雪「…大した事ねぇよ。」

塔「ユキ…。」



『大した事無い?』



「「え?」」

雪「…名無し?」

『いっつもいっつも…そうやって無理して、結局悪化するんでしょ!?』

さっきまでの穏やかな笑みは何処へやら、名無しが黒田に詰め寄った。

『ユキが辛いと私も辛い。何で分かってくれないの…?』

雪「名無し…泣くなよ。」

ポロポロと涙を流す名無しの目元を自分のタオルで押さえてやる黒田。

山「…黒田さーん、名無しさんにここまで言わせてもまだ無理するつもりですか?」

黒田は溜め息をついた。

雪「…分かったよ。今日は先にあがらせてもらう。」





『…ゴメンね、ユキ。』

雪「あ?何で?」

帰り道、名無しが急に謝った。それに黒田は動揺した。

『ユキはチャリ部が大切だから無理してでも出たかったんだよね。』

雪「名無し…。」



雪「確かにチャリ部は大切だけどさ、それって名無しが居てくれるから出来る事だと思うんだ。」

『私?』

雪「うん。今日みたいに心配してくれるから、俺は何も考えずに熱中出来る。」

『…うん。』

雪「だからさ、俺にとっては名無しも同じ位大切。」

『…ありがとう。』

雪「よって謝る必要ナシ。名無しは間違ってないから。」










(大切だから守りたいんだ)

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