DREAM〜弱ペダ短編〜
□I listen...
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ある日の事。
オレはコンビニ帰りにふと気まぐれで近所の公園に足を踏み入れた。
遊具で遊ぶヤツ、キャッチボールをするヤツ。
しかしそんな中に同い年位の女が公園のベンチに一人、座っている。
暫くオレはその女を見ていた。
その女は何かをする訳でも無く、ベンチに座っているだけなのだが、何となく目が離せなかった。
そんな時だった。
キャッチボールをしていたヤツの送球が逸れて、彼女の方向に。彼女は気付いていない。
オレは咄嗟に手を伸ばした。
裕「痛っ…。」
思い切り腕に当たった。
ハコガクの荒北ならキャッチ出来ただろうが生憎オレにはそんな技能は備わっていない。
男「すいません!」
裕「気をつけろショ。」
「"ショ"?てか頭スゴい…。」と言いながら、ソイツ等は去っていった。
『あの…?』
未だ状況が分からない様子の女に注意をしようと女の方を振り向いて気付いた。
裕(コイツ、目が見えてない…?)
裕「あー…ボール、飛んで来てた…ショ。」
『あ…もしかして庇って…ありがとうございます。』
頭を深く下げた女。
裕「い、いいショ!頭上げろショ!」
そこで少し彼女、名無しと話す事となった。
名無しは生まれつき両目が見えない事、この公園が好きでよく来る事、そんな事を知った。
『この公園は…いつも楽しそうな声が溢れていて、元気を貰えるんです。』
裕「オレには、さっぱりっショ。」
『あはは。でも…一人で外出、ましてや今日みたいな事があると怖いので外出は控えなさい、と言われているんです。』
少し悲しげな顔で言う名無しを見ていたら、何故かこう言ってしまった。
裕「じゃあオレが一緒に居るショ。」
『…裕介さんが?』
裕「オレも部活があるから日曜の午後だけ、だが。」
『そんな…悪いです!』
名無しは渋る。ただ彼女自身も揺れているようだ。
裕「…これはオレの為でもあるショ。」
『裕介さんの?』
裕「オレは半年後にイギリスに行く…かも知れない。だから、それまでこの町で思い出を作りたいんショ。」
今日のオレは饒舌ショ。
名無しのせいか。
『そういう事なら是非!』
裕「クハッ!じゃあ半年間、頼むっショ。」
半年間は、あっという間だった。
インハイも優勝、この町も知らない所は無いくらい名無しと見て回った。
名無しという彼女も出来た。
だから母親と一緒に空港まで見送りに来た名無しに約束したんショ。
裕「必ず、戻ってくるショ。」
『…待ってる…ショ!』
裕「…クハッ」
名無しのすすり泣きを耳に残して、オレは飛び立った。