異世界の放浪者と

□"鬼の子"と少女の正体
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「俺はな、コイツらを守る必要があるから来ただけだ。」


刀を抜き放ち、迫ってきていた闇の槍を切り払う。

それを見た灰色の青年は、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにニヤリと笑った。

「へぇ、キミ凄いね。結界も破って入ってくるし、槍も払っちゃうし……殺しがいがあるな。」

青年の目には狂気が渦巻いている。……俺は正直、ああいう"目"は苦手だ。

「時雨、どうする?」

杖の様な槍…―槍の穂先、刃の部分が魔力により柄から離れている―…所謂"魔槍"を手にしたフランが聞いてきた。

「フラン、まずはリリアを安全な所へ避難させろ。それと…リヒト。お前はどうする?」

『え…』

いきなり名前を呼ばれ、戸惑っていたが、持っていた短剣を構え直し、戦う意思を表した。それを見たフランが頷き、リリアの手を取り、神殿の方へ駆け出した。

「ふーん…アンタも抵抗するんだ。無駄な事なのにね〜」

口元に笑みを浮かべながら、青年は術式を展開させる。


「…リヒト、来るぞ!」

『わかってる!』

お互い身構え、相手を見据える。青年は術を完成させたのか、手をこちらに向けてきた。

「《アイシクル》!」

瞬間、地面が凍りつき、そこから鋭い氷の刃が幾つも飛び出す。そして、かなりのスピードでそれらは俺らに迫ってきた。

咄嗟に俺とリヒトは横に跳び、回避する。だが、僅かに遅かったのか、氷の刃が俺の頬を掠め、血が一筋流れた。

『シグレ!!』

「平気だ、これくらい!」

コートの袖で血を拭いながら体勢を立て直す。そして、術式を展開し、魔方陣に魔力を込めた。



「潰えることを知らぬ負の闇よ、今此処に刃となりて彼の者を葬り去らん!《ナイトメア・インヴェイジョン》!!」



「幾千の無罪の者を焼きし業火よ、その血を新たな焔となりて、包み込まん!《ブラッド・インフェルノ》!!」



ほぼ同時に詠唱し、術を発動させる。目の前に血のような紅の炎が広がり、俺の周りを囲んだ。


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