異世界の放浪者と
□因縁
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灰色の青年は、リリアを抱えながら神殿を見た。
「ほら、出てきなよ!会いたかったんでしょ?この娘に。」
神殿の方からは何の変化もない。青年は口角をあげ、短剣を取り出した。
「無視?じゃあ、この娘がどうなってもいいのな〜?」
鼻歌を歌いながら、短剣をリリアの首筋に近づける。…が、それは防がれた。
金属がぶつかり合う音が響き、青年の短剣は弾け飛ぶ。それを見て、また口角をあげた。
「…来たね。」
彼は青年を睨み付けながら跳躍し、一定の距離を作る。
水色の青年…―――リヒトは気絶しているリリアを見ると、目を見開く。
「あはは!驚いた?そりゃそうだよね〜。なんせ、あの娘とそっくりだもんなー。」
ニヤニヤと笑いながら青年はリヒトをからかう。
リヒトはキッと睨み付けながら短剣を構えた。
「そんな顔しないでよー。寧ろ感謝してほしいなー。」
リヒトは何も言わずに見据えたままだ。…心の中を除いて。
「……煩いなぁ、少しは黙ってよ。そんな風に心の中でグダグダ言ってたら、ボクにバレちゃうよー。ていうか、ダダ漏れだけどね。」
青年は目を細めながらクスリと笑う。それを聞き、リヒトは目を見開く。
「『どういうことだ…?』だって?そのままの意味だよ。」
青年がそう言いながら指をパチンと鳴らす。同時に、波紋のような光が辺りに広がる。
『…なにを…ッ!?』
心の中で言った筈の言葉が自分の頭の中に響く。その事にリヒトは戸惑いを隠せなかった。
「こうした方がわかりやすいでしょ?こんな風にボクには聞こえてるんだ。」
青年はニコニコと笑いながらリヒトを指差す。
『……何がしたい。何故その娘を…』
「知りたい?」
青年は目を細める。その目には狂気が渦巻いていた。
それに気づき、リヒトは身構える。
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