異世界の放浪者と
□灰色の青年
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「…わりとあっさりだったね。もう大丈夫そうだよ」
「みたいだな。結界は張り続けてくれよ?」
「りょーかいっ」
結界を張ったまま路地から出ると…そこは酷い有り様だった。
先程の"鎌鼬"によって負傷した人々。バラバラにされてしまった看板や商品、屋台の残骸。
それだけならまだいいほうだ。
「うっ……」
鉄のような匂いが鼻をつき、視界に何か丸いものが見えた。
…その丸いものは元々人間だったものだった。目を見開き驚いた表情のままでそれは転がっていた。
…なんであんな所にブーツがあるんだ?よく見ればそれは切断された人の足だった。身体がバラバラに切り裂かれ、原形を留めているのはまだしも…頭が割れ、中身が飛び出しているものもあった。
「……っ」
思わず口元を手で押さえる。フランも目をぎゅっと閉じて僅かに震えていた。
そして同時にあることを思い出す。
血が滴る短剣
返り血に汚れた白衣
光を宿さない瞳…そして狂った笑顔
周りには原形を留めない肉塊となった人々
狂った…夕陽色
まるで…あの時の光景と似ていた。
「…時雨、大丈夫?」
「っあ…ああ。まあ…気分はあまりよくないがな…」
グロいといえばそうだが…その一言で終わらせていいのかわからないくらい惨状だ。
でも…さっきの"鎌鼬"が何処から来たのか…気配の大元の場所が特定できた。
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