異世界の放浪者と

□"鬼の子"の噂
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「…ここか。」
ふわり、と着地して辺りを見渡す。
周りにあるのは草原と木々。そして、廃墟寸前の神殿らしき建物。
「随分とまた…妙な所だな…」
近くに町とか村とか…人がいそうな場所がない。或いは…わざと離れているとか…?
そう考えていると、足音が聞こえてきた。
「…おや、君は旅人かい?」
話し掛けてきたのは旅人風の青年だった。身に付けている装備は所々痛んではいるが手入れされている。
「…まあ。あんたはそこの神殿?みたいなやつ…なんかわかるか?」
俺がそう聞くと、青年は一瞬目を見開いたがすぐに微笑した。
「あれ?噂を知らない?」
「噂?…かなり遠くからきたからよくわかんねぇんだ。」
「そうなんだ。ならいいや。」
そう言うと青年は周りをキョロキョロと見渡し、声を潜めて言った。
「…そこの神殿には"鬼の子"がいるんだ。オレの故郷に伝わる話では、その"鬼の子"に近づいたとき、近づいた者には災厄が降りかかる、と。今も同じで絶対に近づいてはならない。」
それだけを告げるとまた人のいい笑顔を浮かべた。
「て言う訳なんだ。旅人の間でも噂になってるから…君も早い内にこの場から移動した方がいいよ。近くにオレの故郷の街があるから!」
「ああ。忠告どーも。」
そう言うと青年は笑顔のまま去っていった。
青年が見えなくなってから俺はもう一度、神殿の方を見た。
「"鬼の子"ねぇ……」
"鬼の子"とかいうとだいたい忌み子とかを意味する。となると、あの神殿には忌み子が封印されている、或いはまつられている…?
それとも、かなりヤバイ魔物か厄神か。姿が子供のようだからそう呼ばれるパターンもある。
「情報収集ついでにさっきの旅人が言ってた街にでも行くか…。」

そう呟いて青年が去っていった方に歩き出した。


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