異世界の放浪者と

□その名は
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ーユウサリ視点ー

"リヒト"。彼女からは何度か聞いた名前だ。

私も何度か会う…というよりは見たことがあった。
そう考えていると、不機嫌そうに紅い瞳を睨み付けてくる時雨が見えたので、慌てて持っていた本のページを捲った。
…この本には人々の"輪廻"が書かれていて、羽ペンで調べたい人物の名を書き込めば、その人物の"輪廻"を見ることができる。
だが、その"輪廻"単体を見ることができるのは私だけだ。…かろうじてだが創造主も見ることができるらしい。
別に、この本が無くても自身の能力で"輪廻"をみることは可能だが、他人にも見せる場合にはこちらの方が都合がいい。

…私に見える"輪廻"は一つの帯みたいなものだ。端がなく、環になった帯といった方がいいだろう。

"輪廻"の歪みはその環に亀裂が入ったり、文字通り酷く歪んでいること。
時雨の輪廻は丁度後者の方だ。…とても環とは言えないくらいに酷く歪んでいた事を今でもはっきり覚えている。
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