異世界の放浪者と

□その名は
2ページ/2ページ

「…おい。どうなんだよ?」
「……あ。すっ…すみません…」
時雨の声で自分の世界から現実に戻った。すぐに"リヒト"の輪廻を調べる。
枝分かれして、各世界に存在するであろうリヒトの輪廻を辿り、一つの輪廻についた。
…それに辿り着くまでの間にいくつか気になる綻びのような歪みが見えたのだが……
(あ、あった。)

「あ………」
案の定、というより"リヒトの祖体"にはさっき見た綻びより酷い個人の輪廻があった。
……あの時の時雨には圧倒的に…劣りますが。←
そう考えていると不意に肩を掴まれ、後ろに引かれる。
「…余計なこと考えんな。つか、俺の事そう考えていたのか……?」
笑顔だがどす黒いオーラを放ちながら時雨が私の肩をさらに強く掴んできた。
…これは、さっき考えたこと読まれた…!?
「ああ。読んださ。」
「なっ…!?勝手に人の心を読まないでくださいよ!!」
「だったら見つかったのかどうか言えよ!阿呆!!」
そう言いながら私の肩を思い切り殴った。…痛い。普通に痛い……←
「うぅ…酷い……。わかりましたよ…"リヒトの祖体"の輪廻を見つけました。」
「だろうな…。で、何かあったか?」
「ええ、やはり歪みがあります。小規模だと思われますが、具体的にはまだ…」
「…そうか」
彼女は頷き、私に背を向け、書庫から出て行こうとするのを慌てて止めた。
案の定、不機嫌そうに睨み付けてきた。
「何だよ」
「時雨……貴女は、行こうとしているのですか?」
「当たり前だろ。…それが役目でもあるからさ……。」
そう言う彼女の表情は暗かった。
…きっと、その先が、明るいことではない…悲しみや憎しみに触れることになるとわかっているから。
「…その通り。でも、行かなきゃならねぇ。」

そう言う彼女の表情は

やはり、暗いままだった。



悲しい役目




.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ