異世界の放浪者と

□はじまりの違和感
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「………」
何かが変だ。俺はそれに気づき足を止めた。

この違和感は、…そうだ。ユウサリが壊した輪廻を修正するために訪れた世界に来たときのと似ている。
だが、唯一違うのはその対象が世界まるごとではなく、たった一人の人物から来ていることだ。
しかもそれは、他の世界に行ったときに特定の人物に会う、或いはすれ違った時にも感じていた。

つまりそれが何を意味するのか?

そんなの…一つしかないだろ?

"祖体"に何があった、ということだ。
そもそも"祖体"ってのは他の世界でそいつと似た人物を生み出すときに必要になる…

簡単に言えばAさん(祖体)がいて、その世界をaとする。
bの世界にはまだAさんにあたる人物はいない。だが、世界にも理や都合があるわけでbの世界にAさんが必要になったとしよう。bの世界のシステム、或いは神とか創造主が"Aさん"という祖体の輪廻を辿り、コピーする。コピーの部分は全てではなく、能力の一部や姿や性格だけということもある。そして、コピーした所をbの世界に取り入れ、本来いなかったAさんを生み出す。
そうして、何もなかったかのようにaの世界のAさんのようにbの世界でもAさんは存在するようになるって訳だ。
まあ、あくまでもコピーだからaの世界のAさんと全く同じ人生をbの世界のAさんが辿るわけではない。コピーされているだけで、どこか似ているだけの全くの別人だからな。
つまり、"祖体"っていうのはいわゆるコピー元。
"祖体"がいなければコピーも何も存在しない。

だか、もし"祖体"に何かあったらどうなる?

コピー元に何があればエラーを起こす。それと同じだ。

ようは、"祖体"の輪廻に何があったってこと。


それができるのは…あいつしかいねぇ…

―――――

ユウサリの屋敷・書庫

バァァンッ!!

「おいユウサリ、居るなら抵抗すんな。さっさと出てくれば一発殴るだけで済ませる!」
「…それ、拒んだらどうなりますか?」
本棚の向こうから聞き慣れた青年の声が響く。
俺は思わず口角を上げながら続けた。
「んなもん…わかってんだろ?200回殴る上に俺の闇の魔術を300回、弓矢による攻撃500回だぜ?」
まあ…流石に弓矢500回は左腕が吊りそうだがな…←
内心そう呟いていると、溜め息が聞こえこちらに近づいてくる足音が。
「……それって、選択の余地なしですよね…?」
夕日色の青年…ユウサリがゲンナリしながらそう言ってきた。
「当たり前だろ。」
ニヤリと笑いながら返すとユウサリはまた溜め息をついた。
「貴女って人は……それに、ドアは乱暴に開けないでくださいよ。すでに何度か壊れているのに…」
「んなもん俺は知らねぇよ。」


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