異世界の放浪者と

□"鬼の子"と少女の正体
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青年は狂気を含んだ笑顔をリヒトに向けた。そして、ゆっくりとリヒトに歩み寄る。

『な、何だよ…』

リヒトが後退り、表情が強張る。ずっと笑顔だった青年は、いきなり表情を消した。













「全て、リヒト(キミ)のせいだよ。」













『―――…ッ!!』








そう言われた瞬間、リヒトが泣きそうな……傷付いた顔をした。

「っ!テメェ、それ以上は」

そこまで言いかけて、はっと気づく。


青年が、術式を展開させていたことを。


「動くな!《ギアス・スタン》!!」

『なっ…!?』

抵抗しようとリヒトが動こうとしたが、足枷に術式が浮かび上がる。そのせいで、リヒトは転んでしまった。

「これは…!」

「そう、"鬼の子"が街に近づくことが出来ないように、足枷に術を施したのさ。それを利用しただけ。」

腕を広げながら青年は言い、リヒトを見下す。

「これで、キミは動けないね」

『っ…!くそっ…!!』

悪態をつき、立ち上がろうと足掻く。だが、その度に術がリヒトを苦しめる。



「《オルクス・グングニル》!!」



直後、禍々しい紫と赤の槍が青年に向かって、いくつか放たれる。それに気づき、青年は闇の槍を出して防いだ。

「……へえ、小さい割には随分と凄い術を使うんだねー。まさか禁術を使うとは…」

ニヤリと笑みを浮かべながら、先程の術を放った相手…―フランを見据えた。「小さい」と言われ、フランは不機嫌そうに魔槍をバトンのように回しながら、彼を睨む。

「うっるさいなぁ!大きさは関係ないでしょーー!!」

そう返しながら、フランは術式を展開させる。

「おい、フラン!?」

俺が呼び掛けるが、見向きもしない。……駄目だアイツ、相当怒ってる。

「禁じられた、零より更に凍てつく氷の創造《禁忌の絶零》!!」

赤い魔法陣から吹雪が舞い、細かく小さな氷の刃が飛ぶ。更に地面を凍らせ、鋭い氷の刃が幾つも飛び出し、青年を取り囲んだ。

「うわー…流石にヤバイかな…っと!」

氷の刃から逃れようと回避のステップを踏み、青年はなんとか撒こうとする。

…これはチャンスか?

「フラン!リヒトにかけられた術を解け!」

「ふぇ!?…わ、わかった!!」

いきなり声を掛けられ、驚いていたが、俺が言ったことを実行しようとリヒトに近づくのを横目で見ながら、俺は青年の所へ走った。

「風よ、矢となり降り注げ《ウィンド・アロー》!!」

詠唱し、術を発動させ、風の矢が空から青年に向かって降り注ぐ。

「《マジックウォール》!!」

…どうやら相手も簡単にはやられないらしい。ありとあらゆる攻撃を防ぐ、魔力を結晶化させた防御壁――《マジックウォール》を発動し、風の矢を防いだ。

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