異世界の放浪者と

□"鬼の子"と少女の正体
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『シグレ!!』

「そのまま業火に焼かれろ!!」

リヒトの声と青年の声が同時に聞こえた。やれやれ……

「おい、そこの灰色。」

「何だよ?術不発させた憎たらしい旅人」

炎の向こう側から、笑いを含んだ声がした。…あの野郎…馬鹿にしやがって…



「本気でそう思ってんのか?」


そう言いながら、俺は口角を上げる。

直後、俺の足元を中心に闇が広がる。そして、無数の"腕"が炎を掻き消し、青年に向かって闇から"刃"が幾つも飛び出した。

「なっ…!?」

青年は回避しようと後方に退いたが、"刃"は奴を逃がさず、追い詰める。

"刃"は青年の首筋ギリギリに近づいて止まった。

「…っ…やるじゃん、アンタ。」

自分が窮地だというのに青年は不敵に笑っている。なんなんだ、コイツは…

『シグレ…アンタは…、』

リヒトが驚いた様子で何かを言いかけたが……俺が腕で制した。


「……後で話す。それより、今はコイツだ。」


リヒトと同じ姿をした"灰色の青年"。何故、"リヒトの姿"をし、彼の"声"を出すのか。

そして、街一つを破壊しかねない程の魔術の使い手。

明らかに、ただ者ではない。

「……お前は何者だ?何故、リヒトとリリアを……街を狙った?」


俺の問いかけに、青年はきょとんとしていたが、すぐに笑いだした。






まるで、狂ったように。






「……ククク…あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」


何が可笑しいのかって位笑うと、青年は俺を指差した。

「可笑しいなぁ、キミって、ただの旅人なのにどうしてそんな事を訊くの?」

面白くて仕方ないとでも言うような表情で青年は言った。

『っ…!シグレ、コイツ心の中を読んでくるから気を付けろ!!』

心の中を、ねぇ……。俺も出来るけど、読まれる側だとガードが堅いから無理だと思うが。でも本当に、なんなんだコイツは。

「…ん〜、キミの心の声は聞こえないな…。まあ、別にいいけど。それより、どうなの?」

やっぱりな。←
って、理由かよ…。こんな得体の知れないヤツに正直な答えは要らねえよな。

「ただの恩返しだ。」

「ふーん、それは災難だねぇ。こんなことになっちゃうなんて。本当に、……ねぇ?」


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