retaliation

□05
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小十郎の率いる軍と合流したのは夕方だった

「ここに陣を張る」

見晴らしの良い丘の上でその一声を聞き慣れたように幕が張られていく

焚き火を前に腰を降ろし、向かいの丘に建つ城ともうすぐ見えなくなる夕陽を眺める

明日、この城で最上を……

抱える膝に力が入ると政宗に頭を撫でられる

「ほら」

見上げれば形見の黒塗りの刀が二本差し出される

「磨かせた。明日はこれを使え」

「……はい」

「怖いか?」

「…少し…でも最上を討てば全てが終わりますから」

「お前は一人じゃねぇ。安心しな」

だろ?と後ろを振り返る政宗につられて一緒に振り返ればみんながこちらを見ていた

「俺達は家族の為、村の者の為に強くなる綾斗をずっと見てきた。
皆お前の為にここまで来たんだ」

「最上以外は俺達に任せろ!」
「さっさと仇討ちして帰ろうぜ!」
「空の坊主が待ってるからな!」

「…っ…」

皆に笑顔で言われて涙ぐむ
優しい顔で頭を撫でる政宗を見て我慢できなくなりそうだった

こんなに良くしてくれる皆のためにも明日…必ず最上の首を…







「寝れそうか?」

陣の奥で政宗は小さく呟く

「大丈夫ですよ」

敵の目の前で横になって寝るわけにはいかず、地面に座って仮眠するしかない
正直、お尻も腰も痛い

「俺の膝で「遠慮します」」

相変わらずつれねえな!と少し残念そうな顔をする

「最上を討った後、無理して嫁にならなくてもいいぜ?」

「…え?」

「空とひっそり暮らしたいならそれでもいい。奥州を出たいなら出ればいい。
一生困らないだけの金はやるよ」

「………………」

「好きに生きるといい」

「………はい」


寝れなくても目は瞑ってろ。と言われ静かに目を閉じる


眠って起きれば攻城が始まる
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