火之迦具土神

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起き上がれば隣には変わらず眠っている大切な女

やはり少し髪の色が暗くなっている

柔らかい髪を撫で、頬を触る
睫毛一つ動かさず規則正しい寝息に安心する

あの夢はなんだったんだ?
もうすぐ会えるってどれくらいすぐなんだ?
ただの夢だったんだろうか…


大きなあくびと大きな伸びをして部屋を後にする。
今日は溜まりに溜まった政務で大忙しだ…







朝飯も昼飯も済ませた。
まだ政務は盛りだくさん。

頭の使いすぎでぼーっとする

「…っあー!だめだ!」

頭に入らない

伸びをして後ろへ倒れ込み少しだけ、と瞼を閉じる



この甘い匂いが好きだ
花のような香り
紅い髪が靡く度薫ってきていた

懐かしくなりゆっくり瞼を開ける

目の前にはあの愛しい女

「カグ…ツチ…」

「おはよっ」

「………………!!」

ごちん

「「いっっっった!!」」


仰向けに寝る元親の顔を覗いていたのは本物のカグツチと驚き勢いよく起き上がれば額がぶつかる

「痛いよー!」

「わ…悪ぃ…」

額をさすりながらこちらを見る女を何度も確認する
本物か?本物のカグツチか?

「なん…で…」

「元親が夢で迎えに来てくれたから早く目が覚めちゃったー」

えへへ、と笑うカグツチは変わらず無邪気な笑顔と声を向けてくれる

「あの夢…やっぱりお前だったのか?」

「あたしもよく解んない。でも子供の頃からの事全部思い出したよ」

「辛くねぇか?」

いくら自分や人を守るためと言っても人をたくさん殺していることには変わらない。
当然、いい気分はしない

「元親が大丈夫って言ったから大丈夫!」

変わらない笑顔に胸を撫で下ろす

「元親が本読んでくれたのも聞こえてたよ」

「そうなのか?」

「あと二回ここ触ってたのも知ってる」

カグツチは自分の胸を触る

「……………………」

止めときゃよかった


「…本当にカグツチなんだな…」

「今は…カグツチってゆうより神那かな」

「そうか…神那…それが本当の名前だよな」

変わらず白い頬と柔らかい髪を撫で薄桃色の唇に自分のを重ねる

「んっ…」

唇を舐めるように舌を這わし割って入り絡める
時折漏れる吐息が堪らない

「…と…ちか」

「ん?」

「…お仕事」

「……おぅ」

残念ながらお預けだ。
そして近くに居る。と言って卓に向かう俺の背中に自分の背中を預けて本を読む神那。
生殺しだ


「あ、猫!」

少し開けた障子の間を見れば縁側で猫が日向ぼっこをしている

可愛いとかけよる神那に違和感を覚える

「…日に当たっても燃えねぇのか?」

「うん。もう燃えないよ」

黒くなってきた髪、あの夢、燃えなくなった体
もしかすると今まではコノハナサクヤの目のカグツチしか表に出ていなかったのがイワナガの目の神那も一緒になったからと言うことか?
それくらいしか思い当たらない

そう言えば…読んでやった本の続きは

嫁入りに来たコノハナサクヤとイワナガを見たニニギは美人なコノハナサクヤだけを選んだ

そのせいでその子孫は花が散る如く短命だった

二人を選んでいれば花が咲き誇るように繁栄し、命は岩のように長く強くなる

今はコノハナサクヤヒメは縁結び、安産、愛の神、イワナガヒメは縁切りの神として奉られている

つまり二人で一人と言うことか?


猫を撫でる神那は幸せそうだ
予定よりも早くこの顔が見れたことはあの夢に感謝だな…
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