火之迦具土神
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部屋には幸村が畳に額をすり付けている
と
「…どうしたの?」
佐助のお陰で以前より鮮明に見え始めた目を凝らして幸村を見つめる
「…カグツチ殿。某、力を求めるあまり嘘をついていた」
「嘘?」
「長宗我部殿が攻められ武田まで逃げ延び、ここで介抱していると申したがあれはカグツチ殿を武田へ来させる為の嘘であった!!」
「…じゃあ…元親は…?」
「四国でしっかり生きておられる!!しかし、某のせいで毛利に攻め込まれそうになっており、危険な状況でござる…」
「………………」
「カグツチ殿、某、これで償いになるとは思っておらぬが長宗我部殿の所へカグツチ殿を送らせては貰えぬか?」
「真田の大将は先に発つから、もう一度水に入って準備したら俺様の凧で一気に瀬戸内へいこう」
「………わかった」
言葉通り、幸村は軍を引いて瀬戸内へ向かい、曇り空の下、カグツチと佐助は鏡池へ来ていた
「お猿さん、もーりって強いの?」
「そうだね。頭がいいから作戦でいつも勝ってるね。
力で押す長宗我部の旦那には苦手な相手だね」
「そっか…」
「カグツチちゃん、その力で長宗我部の旦那を助けたくても強すぎると旦那の仲間も焼いちゃうから気を付けようね」
「…はい」
カグツチは鏡池の淵で木の枝を取り土に何かを描く
「…これ…」
土に音を立てて描かれたのは佐助の簡単な似顔絵
「お猿さんが居ないときも目開けて見る練習してたの」
「じゃあカグツチちゃんには俺様こう見えてるんだ」
「うん。でも元親の顔見たことないから会っても解らないかも…」
「大丈夫。ちゃんと解るよ」
紅い髪が美しい頭を撫でてそろそろ上がろう、と着物と布を渡す
元親に会える嬉しさと無事かどうかの心配が入り交じる