火之迦具土神

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駆け上がってきたのは見覚えのある二人だった
赤い服にハチマキ、迷彩服に橙色の髪

「くぁぐぅつぅちぃ殿ぉぉ!」

必要以上の大きい声にカグツチはびくっとする

「大将、恐がられてるよ。音量下げて」

「む!し、失礼いたした!!」

佐助は元親とカグツチに近づいてくると久しぶり、とにっこりした

「お猿さん?」

「言った通り大将、真田幸村連れてきたから、見てもらえる?」

小さく頷き手を差し出して幸村の手と合わせる


「…はい。」

「…終わりで…ござるか?」

もっと盛大な儀式のような物を考えていた幸村は拍子抜けだった

「少しだけ火を出してみるとわかると思います…」

そう言われ、社から離れて槍を振ってみれば包む炎がいつもの倍以上だった

「うわ〜カグツチちゃんすごいね〜」

「この力があれば天下を取れるやもしれん!」


元親はこの光景を見ていたが違和感を覚えた
以前カグツチが自分に力をくれた時、体の奥から力強く暖かい何かが溢れて力が沸き上がったのが確かに感じ取れた。
しかし幸村はもう終わりか?と何も感じていない様子だ

この違いは何だ?



「カグツチ殿!!この幸村、感無量にござる!!」

「カグツチちゃん、今日は長宗我部の旦那がいるから帰るけど、また来るね〜」

「もう来るなよ」

はいはい、と小さく言い幸村と佐助は一先ず島を出る


「カグツチ?」

「なぁに?」

「本当に幸村に力を分けたのか?俺の時みたいな感覚はなさそうだったじゃねぇか」

その言葉を聞いてカグツチは幸村達の足音が消えてからイタズラっぽく笑う

「元親にあげた力はこれくらい」
両手を大きく広げて円を描く

「幸村にあげた力はこれくらい」
今度は親指と人差し指を丸めて円を作る

驚愕する。
力を貰ってから自分の力を試していなかったため気付かなかった

少しだけ力を貰った幸村であれならその十倍以上の力をもらった俺は一体…

「何で幸村には少ししかやらねぇんだ?」

「あの人いい人そうだけど血の臭いがするから嫌」

「…俺も戦で人の血は浴びてる…何が違う?」

「幸村は自分の為に強くなるって思ってるけど元親はみんなが幸せになるために強くなるって思ってるから」

手を握ったらなんとなく伝わるんだよーと微笑むカグツチにつられて微笑む


「ありがとな」

紅い艶のある髪を撫でる

「幸村にはついてかないから大丈夫だよ?」

頭に触れていたせいか元親の考えは読まれていた
きっと武田はカグツチを連れて帰ろうとする。
そうなれば幸村の力の元として利用されるかもしれない、と考えていた


「行くなら幸村とお猿さんのとこより元親のとこがいい」

「いつか連れていってやるよ」

無邪気に笑うカグツチに目を細める
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