火之迦具土神

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「…んだ…?これ?」

神話か?
カグツチはつまり自分の親を燃やしたってことか?

普段本など読まない元親にとってこの分厚い本は抵抗がある。
しかし読まなければカグツチの事は解らない

眉間をごりごりと指圧しながら読み進める







一月、腹が目立つにつれ、母体の体温が上がり続け高熱が続く

二月、高熱は治まらず母子共に手の尽くしようが無く、出産を待つしかない

三月、母親は苦しみ出し陣痛を訴える
陣痛は一週間続き母親は精魂尽き息絶える
父親の意もあり赤子だけでも助けようと産婆と共に取り上げる
取り上げた瞬間赤子は燃え上がり家族を家ごと燃やす

しかし赤子は無傷で発見され、近くの祖母の家へ引き取られる

赤子の名は神那と名付けられる


産まれて四年、日に日に髪の色が黒から紅色へ変わる
根から先まで色を変えれば次は目の色が黒から紫へ変わっていく

妖の子と言われ子供に石を投げられればその子に火傷を負わせる

強い日差しに当たれば体を焔が包み着物だけが燃えつきる

身を守るために焔を操る子と云われ
好奇の目で見続けられた。



産まれて四年半、
噂に耐えかねた祖母が神那に手を挙げる
神那は祖母もろとも家を炎で包み焼き付くした

時を同じくして、以前焔の噂を聞き付けた旅人が神那に種火を貰い店を開けば大成功したと言う知らせを持ってきた為、幸か不幸か村興しの為遠浅向こうの島へ社を作りそこへ奉ることになる

神でもない人でもない子を偽る為、産み落とされる際、焔で親殺しをした事から、出雲神話の火之迦具土神と名乗らせることとする









「…ひでぇ…」

前半部分にはカグツチの生い立ち、何故そう呼ばれるようになったかが記されていた

あんなにも元気で健気なカグツチにはこんな過去があるなど思いもよらなかった
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