ugly duck

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「政宗殿!おじゃまするでござる」

眼帯をした男の入る温泉にやけに声の大きい茶髪の男が入ってきた

「Ah,お前も稽古終わったのか」

「某くたくたでござる」

武田信玄がひょっとこの面を付けての鍛練が日課になっていた

先日の戦で腕を負傷した政宗はリハビリの様な感覚で信玄に稽古をつけてもらっていた


「腕の調子はいかがでござるか?」

「だいぶ感覚も戻ってきてるぜ。医者にはまだ無理するなと終われるけどな」

「そうでござるか。政宗殿が快復してまた共に競えるのが楽しみでござる!」

「Ha!俺がまだ治ってねぇからって稽古で気を抜くんじゃねぇぞ」

それはないでござる!と言いかけたが二人の目の前にぶくぶくと泡が浮き上がってきたのを見て顔を見合わせる

「何だ…これ?」

「空気の泡…でござるか?」

二人が覗き込んだ瞬間物凄い勢いで水柱が上がる

「おいおい!何だよこれ!」

驚く二人に水柱の上から人が降ってきた
思わず二人とも受け止める

「おい幸村!この女…」

真田幸村の方を見ればもう一人の女を抱えて耳まで赤くし固まっている

再び自分の抱える女に視線を向ければ長い栗色の髪に小麦色の肌、白地に青い牡丹の浴衣だ
着ているものは浴衣だがなんだか違和感がある



「ちょっとちょっとー!何の騒ぎー?」

屋根の上から佐助が降りてくる

「あれ?二人ともお楽しみだった?」

「んな訳ねぇだろ。幸村なんとかしてやれ」

佐助が幸村を見ると変わらず女を抱えたまま赤面して固まっている

しょうがないなーと幸村から女を受けとる
幸村の方の女は体の線が細く、明るい茶色の髪で肌の色が白い
紺地に桃色の花が描かれた浴衣を着ている



「なるほどね〜。水柱が上がるとこのお二人さんが出てきたと…」

「Ah,この髪の色、着物、おかしいよな…」

「ん〜。見たところ忍でも無いし刺客の可能性も低いよね〜。目が覚めるの待とうか。」





今日はなんだか月が赤い
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