龍神
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「で、何だ?」
風呂上がりの浴衣のまま胡座をかいて座れば目の前に小十郎が強張った表情のまま正座する
「政宗様、明日名前に会いに行くおつもりでございますか?」
「Ah?まぁ…そのつもりだ」
「明日の弔いの儀から七日七夜、会ってはなりません」
その言葉に政宗は明らかに眉をひそめた
「何だ?物忌でもしろと言う訳か?」
「その様なものです。実際に物忌は必要ありませんが、名前はあぁ見えても神の域の者ですので穢れを嫌います」
「なるほどな…七日七夜が終わり八日目には会っていいのか?」
はい。と頷く小十郎を見てだるそうに溜め息をつく
「仕方ねぇな…」
暫くは稽古で気を紛らわせるしかないな…
政宗が自室へ戻ると小十郎は引き出しから箱を取り出し蓋を開ける
中には名前から貰った銀髪
「これは…死んだと思え、とでも言うことなのか…」
名前が髪を贈ってきた意味が解らずにいる小十郎は胸が苦しくなる
青い結紐を懐かしそうに眺める
布団に寝転び外に目を向ければすっかり乾いた庭が見える
「あいつ…どうしてるかな…」
あいつにとっての本当の飯はどうしてんだ?
毎日会いに行っていたのに突然行かなくなるのをどう思う?
少しでも寂しいとは思うのか?
もしくは全く気にならないのか?
あの二人が思いあっているならどうにかしてやりたいと思ったが、いざ名前に会えばついつい惹かれてしまい自分の物になればいいのに。と思ってしまう
小十郎だって俺が会うことにいい気はしないだろう
大きく伸びをして瞼を閉じる
あと八日…長ぇよな…
改めてあいつが神と言われてもあまり実感が沸かない
見た目も人間と何も変わらない
痣を消したり足の疲れを癒したり不思議な力はあると思う
あいつが龍の姿でいるのを見たことだってある
しかし人間の姿のあいつはただただ人間の女にしか思えない
三百才を越えているのも疑わしいほどだ
会えば会うほど欲しくなる
神のあいつを手に入れることは可能なのか?
夜会うことが出来ない事だって解らないままだ
まだ謎が多すぎる
やはり小十郎に聞くしかないのか…