龍神

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「政宗様!!」

突然聞こえる声にびくりと体を震わせ目を開くとそこには息を荒げている右目、片倉小十郎
後ろにはほっとした顔の家臣が何人もいる

「お探ししたのに何故返事をしてくださらなかったのですか!」

「…いつだ?」

「つい先程までずっと大声で呼んでおりました!!」

おかしい
名前のところはすぐそこだ
小十郎が探していれば気付く筈…
しかし俺の耳には届いていなかった

後ろを振り向くが先程降りてきた階段は無くなっていた

「お…俺さっき竜に会ったんだ!ここに階段があってその先に竜の女がいた!」

「竜…ですか?」

興奮して話す政宗に対し小十郎は少し顔をしかめる
確かにいきなりこんなこと言われて信じる者はあまり居ないだろう

「とりあえず、城へ帰りましょう。日が暮れます」

小十郎に手を引かれて山道を引き返す
さっきまで痛んでいた足は何事もなかったかのように軽い。
あの水のお陰なのか?

もう一度振り向くがそこには階段は見当たらなかった






「政宗様」

「…………」

城で竜の話をしたが皆は信じてくれず、子供の話す絵空事と思われてしまいすっかり機嫌が悪くなっていた

小十郎が呼んでもそっぽを向いたまま

「政宗様。竜とゆうのは鱗が透き通る様な綺麗な蒼竜でしたか?」

その言葉に目を丸くして振り向くと難しい顔の小十郎が正座している

「…what's?」

「はい…三度、政宗様くらいの歳の頃に会ったことがございます」

難しい顔をしているがその目は昔を懐かしむ様な優しい目をしていた

「そうか。俺はもう会えねぇかもな。降りた階段が消えてたんだ」

「小十郎の時もでございます。しかしまた森へ行けば階段はあり、上ることが出来ました」

「じゃあ俺ももう一度行けば…」

「会えるかもしれませんね」

優しく微笑む小十郎に明日、共に森へ行くことを約束する
あの美しい鱗の竜、色白で銀髪の不思議な雰囲気を持つ名前をもっと知りたい、と夢中になっていた

夕暮れまでなら居ると言っていた。
朝から行こう!と早々と布団に潜る

しかし翌日の天気は期待を大きく裏切られ、どしゃ降りだった
最近晴天続きで参っていたが恵みの雨、と言いたいが降りすぎだ
森へいくと約束していた小十郎は野菜が心配だと言い畑に行ってしまった

縁側に座り空を見上げるが晴れる様子はない
家臣達は未明から降り続くこの雨で堤が決壊する可能性があるとかでばたばたと慌ただしい

「Shit!!…暇だ…」

胡座をかき頬杖を突いてつまらなそうに呟くとみるみる内に雨足は弱くなる
自分の言葉によるものなのかと錯覚してしまうほどタイミングが良くぎょっとしていると空には虹が架かる

これなら行けるか…
そう思い荷物を持って足早に森へ向かう

あの苔だらけの階段は姿を現すだろうか?
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