囚姫

□02
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「元親…元親っ」

まだ明け方で薄暗い。

「んー…厠か?」

瑠歌は首を横に振る
厠以外にこんなに早く起こす意味はあるのか?

「どした?」

大きくあくびをすると外を指差す

「人が来る」

「あ?」

こんな時間にか?
誰だ?

布団を出て槍を持つと瑠歌は天井を見上げている

「元親、ここ」

天井を指差すと声が聞こえた

「あは〜ばれちゃった?」

畳に黒い染みができたかと思うと人が沸き上がってきた

「あんた…真田の猿飛か」

「ごめんね〜!奇襲とかそんなんじゃないから!」

元親は槍を置いて胡座をかくが瑠歌は佐助を睨み付けて身構えている

「そんなに殺気立てられると気まずいんだけど〜」

「瑠歌、大丈夫だ」

その言葉を聞くと殺気は一瞬で無くなり元親の隣にちょこんと座る

「で、どんな用事なんだ?」

「その女の子?昨日忍を捕まえたのは」

「あ?あぁ…そういえば厠で」

「ごめんね。あれうちの忍だったんだよね〜
島津、大友辺りを見張らせるついでに中国四国も様子見といてって言ったんだけどここで捕まっちゃったって聞いて詫びをね。」

「そうだったのか。まぁこっちも被害はねぇし気にすんなよ」

元親が言うと佐助は目線を瑠歌に向ける

「長宗我部はとうとう忍を雇ったの?」

「雇ったわけじゃねぇよ」

仕方なく瑠歌を連れてきた経緯を話した

「鉢屋か…もう無くなったと思ってたんだけどこの子が…」

「そんなにすげぇのか?」

「大元を辿れば風魔と同じ一族だよ。なかなかの技量だと思う
俺様がすぐ見つかっちゃうくらいだしね〜」

「そうか…ちょっと席はずしてくれねぇか?」

瑠歌に言うと頷いて静かに部屋を出ていった


「あのよ、こんな事聞くのもあれなんだが…女の忍ってぇのは夜伽なんかもすんのか?」

「ん〜まぁ、自分の雇い主に言われればって感じかな〜」

「俺は自由にしてやりたくて城から出したんだ。
そんなことさせるためじゃねぇ…」

「でも瑠歌ちゃんのこと気に入ってるんでしょ?」

「あ?…いや…なんつーかだな…」

「長宗我部の旦那、好きそうな感じだもんね〜!
自由にしたいだけなら城から出して終わり、四国にまで連れてくる必要もないでしょ?
鉢屋は風魔と同じで律儀だからね。
それに瑠歌ちゃん若いから。旦那に気に入られようとしてるんじゃないかな〜」

確かに…なんだかんだ気にはなるしつい四国まで連れて来ちまった
正直、たまに見せるあの笑顔はやばい。
俺に気に入られようとしてるなんて尚更可愛いじゃねぇか…

「…旦那、口元緩んでるよ」

急いで口元を手で覆う

「そういやあいつ…主を喜ばせるのも仕事って夜伽しようとしたんだ
忍は主を無理して喜ばせなくちゃいけねぇのか?」

「基本的には主から命を受けて成功させるのがそれなんだけど戦に行けない忍やくの一はそっちになるね。


「どうすりゃ…普通の生活をさせてやれる?」

「旦那次第だよ。忍を活かすも殺すも主次第だからね」

「そうか…」

「ま、何かあったら相談位乗るよ」

これ手土産。と箱を渡して一瞬で佐助は居なくなった



瑠歌がこの先どうなるかは自分次第…
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