火之迦具土神
□05
1ページ/5ページ
「アニキー!」
カラクリの内部で油に汚れていると頭上から声が聞こえる
「そろそろ休憩しませんか?」
「………そうだな」
工具を置き、梯を登れば熱い湯で絞った布を差し出される
仲間たちは一様に心配そうな顔をする
「そんなに心配すんな。とっとと暁丸完成させて毛利なんか蹴散らしてカグツチ迎えに行くぞ!」
「「アニキー!!」」
ずっと徹夜でいじっていたため疲れが溜まっていた
少し休む、と言い握り飯が乗った盆を貰い部屋へ戻る
あいつは今どうしてるんだろうか…
「………ちゃんと飯は食ってんのか…」
握り飯を頬張りながら座り込み部屋を見渡すとあの分厚い本が目につく
何となく手に取ればあと2枚、頁が残っていた
開けば頁の上部には木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤヒメ)と書かれていた
カグツチを求める者は少し減ったものの後を絶たず
あの目は何を求めているのか相変わらず解せず時折焼けた死体を生み出す
今日参拝に行った者がカグツチが寝ていた為目を見て逃げるように村へ戻り言っていた
名が火之迦具土神ならばあの目は木花之佐久夜毘売だ。と
木花之佐久夜毘売とは神話の中で一番と言われる美人、妻にすれば花が咲くように繁栄させる神だがどういうことかと聞けば
あの目は見る者を飲み込み夢中にさせる
心が弱いものは手に入れようと無我夢中になるのも仕方がない
と言う
カグツチが幼い頃から知っている者の話によればあの目は自分を守る者を求めているのではないかと言う
男があの目に誘惑されるのは相応しいものでは無いため、無理矢理抱こうとさせて火で包み、もう現れないよう消してしまおうとしているのでは。
赤子の頃は火が操れなかったのも仕方がないと考えたとする。
その後の祖母の家では度々手を上げられてきたがカグツチは火を出すことが無かったと言う
最後のあの火はカグツチが耐えきれずに出した火ではないのか。
カグツチとして島へ出したものの、あの目の虜になった者だけが死ぬ。
石を投げる子供が居ても火を出すことはない
そして長宗我部の殿が来たが今までで一番強い者と感じ取ったかの様になついたのが証拠ではないのかと。
カグツチは俺に守ってほしかったのか?
俺があの目を見たとき、この本に書いてあるように誘惑されると言うよりは守ってやりたいと思ったのは相応しいと思ったからか?
益々守れなかった自分に腹が立つ
「野郎共!!今日暁丸を完成させるぞ!!!」