retaliation

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「ねぇさまー!」

笑顔で抱き着く空に安心する
が、何故か着物の匂いを嗅いでくる

血の匂いが取れてないのか…

「ねぇさま、むねの匂いがする」

「…………………え?」

「HA!流石だな!」

固まる綾と腹を抱える政宗、きょとんとする空。

「なぁ空、兄貴いらねぇか?」

「僕、かあさまに妹と弟しかできないって言われたよ?」

「俺が兄貴になるのは嫌か?」

空は少し考えて満面の笑みになる

「むね、僕のにいさまになるの??」

「空が俺でいいならな」

「僕ね、むねがにいさまなら良いなってずっと思ってた!」

嬉しいのかなかなか見せないくらいの笑顔で抱きつく空に政宗の口元も緩む

もし子供が出来たらこんな感じなのかな…と思いながら空の喜ぶ姿を嬉しそうに眺めていた








「ん…寝ちまったな」

部屋で大の字になって空と眠っていた政宗は綾が居ないことに気付く

女中を呼び空を頼み焦って探し回っているとあっけなく見つかった

「小十郎…」

何してんだ?と言おうとしたが言葉が出なかった

小十郎の後ろにいたのは鮮やかな空色の着物を着た女
まだ短い為結うことは出来ないからか片側へ髪を流し、簪がバランス良く刺さっている

そして顔は今までとは見違えるようだった

その辺の芸者など比べ物にならない
女は化粧で変わると言うがこれほどまで変わるのかと驚く

「まだ正式に皆に知らせておりませんので、今夜報告と言うことにしようと思いまして」

「似合う?」

長い袖をひらひらとさせて心配そうに言う

「beautyful…」

息を飲む美しさ、とはこうゆうのを指すのだろう









空が早々に寝てしまった為、酒盛には綾だけが参加した

政宗が労いの言葉を言い、今夜は無礼講だ!飲め!と言い皆は飲み始めたが数人が口々に小十郎と政宗に訴えた

「あの…綾斗がまだ…」

「心配すんな。そろそろ来る」

ある程度酒が進んで皆がほろ酔いになった頃、政宗は目で合図をすれば小十郎は少し廊下に出て人を呼ぶ

「Hey!ちょっといいか?今更、となるかもしれねぇがこいつを紹介しとく」

小十郎に連れて来られたのは空色の着物を着た華奢な女

「筆頭!これですか?!」
小指を立てて叫べば他の者は歓喜する
「いつの間に!?」


「実はな、てめぇらがよく知ってる女だ!」

この言葉を聞き一瞬静まる
侍女か?女中か?城下の女か?
と困惑した顔を見て綾は三指をついて少し頭を下げる

「空共々お世話になっておりました。綾斗、改め綾です。」

皆言葉が出ない。
確かに華奢ではあるがあの太刀筋は女ではない
すっかり男と思っていた為思考が止まってしまっている

「以前、黒川に最上が攻め行ったのを援護しに行っただろ。
あの時、丁度村から離れていた綾は空と2人で無事だったんだ。
しかし頼る所が無く縁談のあった伊達を頼ってきたがどうしても最上を討ちたいという綾の意思を尊重して男として住まわせていた。
騙すような形になった事は悪かったな」

さすがに仇討ちのつもりで入ったと言えば立場が悪くなるため伏せることにした


「じ…じゃあ綾斗…いや、綾…様は黒川の…?」

「黒川綾、でございます」

皆はあっけに取られて酔いも冷めてしまった


「…ま、そうゆうことだ。最上を討った今、綾斗で居る必要はない。
綾に戻り、近々輿入れをする」

突然の報告に皆はしばらく動けなかった
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