火之迦具土神

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「元親に船も返して。兵も引いて」

「………………ならぬ」

この暗い冷たい目は嫌だ
元親を苦しめてるのも嫌

黒いどろりとした感情が沸き上がり元就とカグツチの回りに赤黒い焔が立ち上がる

「お前も死ぬぞ」

「この焔はあたしを燃やさない」

「……………」

元就が空を見上げれば薄曇りの空から日が射し始める

「……っ」

じりじりと皮膚が焼けるように熱い
実際に焼けるのは衣服だけだが熱さは感じる

「そなた、日輪の光に弱いのか」

「晴れてると外には出れないの」

焔に囲まれても涼しい顔をする元就は諦めているのか勝算があるのかわからない

カグツチの着ている狩衣の袖が火を上げ始めると船の下で懐かしい声がする


「カグツチ!!!」

「…長宗我部か」

「元親…」

元就に止めは刺すべきなのか…
放った焔は櫓を焼き尽くし船を傾かせていた

「どうした?我に止めは刺さぬのか」

「…元親の目の前で人を殺したくない」


「カグツチ!!無事か?!飛び降りろ!!」

元親の言葉を聞き、自分と元就の間を焔で埋めて海へ飛び込む

「カグツチ!!」

「もと…ちか」

焼け焦げた狩衣の火は消え、水面で元親に抱き寄せられる

「なんて…危ねぇ真似…」

「元親怪我してない?大丈夫?」

「大丈夫だ。ってこっちのセリフだろうが!」

元親に額を小突かれた

「とりあえず…俺の城に連れてくぞ。ちゃんとつかまれよ」

泳げないカグツチは元親の背中に腕を回し力を込める

カグツチを抱いたままゆっくりと泳ぎ出す

やっと会えて嬉しそうにするカグツチとは裏腹に、元親はこれだけの船を沈めた為、これから何日カグツチが寝込むのだろう。と不安が募っていた
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