promise

□02
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次の日もその次の日も雨が降っていたからか、数回丘を見に行っても胡桃の姿は無かった

もう会うことはないのか?

あの寂しそうに笑った顔が頭から離れない

「アニキ、元気ないっすね」

「…なぁ、一度会った女のことがやたらと気になるのは何でだろうな」

「ア…アニキ!!それって恋なんじゃ…!!」

「こ…恋?」

やりますねーと仲間はにこにこするが元親には恋と言われてもピンと来ない
確かに元親の好きなタイプではあるが少し違う気がした



胡桃に会ってから3日目、朝早くから丘へ上がっていく

朝この丘に吹く風は本当に清々しい
昨日も雨で少しぬかるんでいるところもあるが草木は青々としていて鮮やかだった

丘を登りきりいつもの木陰へ目を向ければそこには見覚えのある栗色の髪がなびいている

「胡桃!」

海を真っ直ぐ見つめていた目を元親に向ける

「あ、片目くん」

「何だその呼び方」

片目だから。と笑う顔はやはり寂しそうだ

「ちゃんと元親って名前があんだよ」

「じゃあ元親って呼んであげるよ」

二人で並んで海を眺める
登って間もない太陽が瀬戸内海の水面を照らし輝かせていた

「あたしこの国でこの景色が一番好き」

「俺もだ」

「でもこの国の上の人は嫌い」

「……何かされたか?」

思いもよらない言葉を聞いて顔が強ばる
元親は家臣や民が家族と共に平和に暮らせるのを願って国造りをしてきたつもりだった

「住むところも家族も自由も全部取られちゃった」

「…そう…か」

「……そろそろ帰らなきゃ」

「あ?もう帰るのか?」

まだ少ししか話していない
家の事も気になる
何より胡桃の事がもっと知りたかった

「内緒で来てるからあんまり長居できないの」

「そう……か。気をつけて帰れよ」

「ありがと」

丘を降りていく胡桃は何となく寂しそうな表情だった

次はいつ会えるだろう?
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