龍神

□01
1ページ/6ページ

春の柔らかい日差しの中、辺りは鮮やかな新緑で囲まれ、綺麗な清流の小川がある

そんな穏やかな空気の中を一人の男が草を掻き分け歩いていく
まだ元服して数年、15歳の頃の伊達政宗だ

「Shit!!小十郎ー!どこだー!」

いくら叫んでも木霊するだけで返事はない

「Hum,あいつ大人の癖に迷子になりやがって仕方ねぇな…」

もちろん迷子なのはこいつである

歩き疲れた頃、こんな山奥に小さな階段が目に入る

何かに導かれるようにその階段を登っていけばそこには畔に小さな小屋のある大きな池
これだけ大きければ誰か知っているだろうに話も聞いたことがない。
何かあるのだろうか?

恐る恐る池を覗き込んだが何もない

少しほっとしたのも束の間、目の前で大きな蛇の様な物が岸へをゆっくり這い出した

透き通るような蒼い鱗に長い尻尾
鋭い爪の生えている四本の足
鹿の様な立派に枝分かれしたした太い角

あれは…竜か…

ごくりと喉を鳴らすと竜はみるみるうちに人の姿に変化していくとぱたりと倒れ込んだ

無意識のうちに駆け寄ると自分より少しだけ歳が上に見える女だった
髪は長く細い絹糸のような銀髪だ

「Hey!大丈夫か?!」

頭を持ち上げ声を掛ければ少しだけ目を開く

「……お腹すいた………」

「Ah?」

死んでしまったのかと思い必死で声を荒げた自分が恥ずかしくなってきた

「Sorry…食い物持ってねぇんだ…何か木の実を…」

立ち上がり木の実を探そうとするが手を掴まれたためそれは出来なかった

「座って」

苦しそうにそう言われてしまっては従うしかない
素直に腰を下ろすと女は袴に手をかけて来る

「おっおい!!」

政宗の制止は聞き入れられず簡単に袴は脱がされそこをパクリとくわえられた

ねっとりと舌を絡めて音を立てながら動かせば初めての感覚に呆気なく果ててしまう

「なん…だよ…お前…」

「ごちそうさま」

口をあんぐりして何も言えない様子の政宗を見てくすりと笑う
嘲笑われた様に感じたのか政宗は少し顔をしかめて声をあげる

「お前何者だ!」

「名前。龍神」

「りゅう…じん?」

やはり先ほど見たのは竜か?
しかしなぜこんなところに空想上の生き物が?
なぜ人に?

「理解できないって顔だね」

にっこりと笑う名前の笑顔に少し面食らい赤くなる

「また遊びにおいで」

池の水をすくい政宗の足を少し揉んでやる

「道が…」

「そこの階段を降りて行き一番最後の段だけ目を瞑って降りればいい。
すぐそこまで迎えが来てる」

「…また来たら居るのか?」

「夕刻までに来ればね」

「OK!またな!」

名前の実態はわからない。
しかしあの不思議な雰囲気はやけに惹き付けられるものがある

また会いたい。
そう思わせる不思議な魅力がある

苔だらけの階段をゆっくり降り、最後の一段に立ち目を瞑り段を降りる
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ