囚姫

□05
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「あれは…風魔…」

屋根の上に立つ黒い影、走る足音が聞こえたと思えば数日前に泊まっていた家康が血相を変えて近付いてきた

「元親!大丈夫か?!」

「家康…九州は…」

「四国に刺客が送られるという情報が入ってな。九州へ行くより友の方が大切だろう!」

「家康…」

「ありがとうございました」

頭を下げれば目の前に風魔が現れる
『だから言っただろう』
と微かに口を動かす

確かに元親に夢中になり囲まれるまで気付かなかった
風魔はこれが言いたかったのだろう

「瑠歌、ありがとよ」

俯くと元親は頭を撫でながらにこりと笑う

「瑠歌、少しいいか?」

いつになく真剣な顔で家康はこちらを見る

何か大事な話だろうと改めて元親の部屋で四人向き合い話すこととした

「瑠歌、儂が絆で日の本を一つとしようとしているのは知っているな?」

こくんと頷けば少し顔が緩み笑顔が覗く

「お前も、鉢屋として手伝ってはくれないか?」

「家康…」

思いもよらない案に元親の顔は曇る。
手伝う、と言うことは長宗我部の忍として元親と共に戦に出る。という事だ
いい顔をするはずもないだろう

「元親、最後まで聞いてくれ。
今のままでは今回の様な事だってある。元親も安心して戦にも出られないだろう
全面的に出ろと言うわけ出はない。諜報程度で元親のそばに居られれば互いに安心するだろう?」

「…うん」

「天下を統一すれば二人とも安心して一緒になれるだろう?」

「い…家康!!」

気まずい顔で元親は思わず立ち上がるが家康は楽しそうに笑っていた

「元親と一緒に戦に行く」

「瑠歌!」

「そうか…頼もしいな」

狼狽える元親と笑顔で言う家康を真っ直ぐ見据える
戦や人を殺すのは本当にこれで最後にできるならそうしたい

「でも…もう主は変えない。元親の言うことしか聞かない」

「あぁ。勿論だ!」







徳川と同盟を組むと言うことで決まり、徳川と共に島津を訪ねた後、関ヶ原へ向かうこととなった

元親はずっと不満そうだったがこれで最後の戦と解れば観念したようだ

「本当に着いてきてよかったのか?」

「何で今更…」

陣で人払いをした後、共に夕飯を食べると元親は遠慮がちに聞いてくる

「こんなでかい戦…危ねぇだろ」

「元親がいるから大丈夫」

そう言えば照れ臭そうに微笑む

「私は戦の中には入らないし元親に切りつけようとする奴が居ればそいつにこれを打ち込むだけ」

取り出したのは毒が塗ってある苦無
家康が元親を思い、崖の上等の高いところから見て援護するだけでいいと言った

「任せたぞ。さっさと終わらせて四国に帰らねぇとな」

「うん」

「…瑠歌。…覚えてるか?家康がまた四国に戻ってきた日に約束したこと」

こくんと頷くが元親の言葉を遮った

「四国に帰ったらね。今は言わない」

「そうだな」



「あんたか?西海の鬼の忍ってのは」

二人で微笑み合うと背後から低い聞きなれない男の声が聞こえる
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