姫花忍

□02
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委員会があるとかで待っている間に教室は私一人になってしまった

廊下に誰も居ないことを確認して手洗い場でバケツに水を溜め、今日履く筈だった体操着の短パンを水に浸けてごしごしと擦る

「ペンキって落ちるのかな」

体育が終わりロッカーを開けると忘れたと思っていた体操着が出てきたが広げると黄色いペンキで中傷が書かれているとゆうよくあるアレだ

手も擦り過ぎて真っ赤になりある程度ペンキも落ちたところで諦めて切り上げる
教室にはまだ元親はいないと確認するとハンガーに短パンを掛け、机に登り窓の桟に引っ掻ける

いつもだから。そのうち無くなる。
ぐっとそう言い聞かせて校庭のサッカー部を眺める

真田くん今日も凄いな…



「帰らねぇのか?」

背後から聞こえた声に跳び跳ねるくらい驚いて振り向くと政宗が立っている

「政宗くん…どしたの?」

これ、と一枚のプリントを見せてきた
現代文の授業中居眠りしていて怒られたにも関わらず反省していなかったため今日中に解いて出せと言われたらしい

「大変だね…」

やってらんねーと言いながらも席に座り辞書片手に問題に向き合うのを見てなんだか口元が緩んでしまう

「一人で何してたんだ?」

「あ、元親くんが委員会でね…」

言い掛けてはっとした
短パン窓に掛けたままだった!
がたがたと机の上に登り慌てて短パンを取る

「お前そのパンツ…」

「あ、これね、ロッカーに入れてたの忘れてて…」

おかしい。何か泣きそうになってきた…

言葉に詰まるとまだ濡れている短パンを奪い取られ、政宗は一気に不機嫌そうに眉間に皺を寄せる

「いつからだ」

「……前から」

「…俺の時からか?」

小さく頷くと詰め寄られイスに足が引っ掛かりぺたんと座る

「何で…言わなかった」

「だって政宗くんに言うと犯人探すでしょ?これやった子がみんなの前で晒されるのは可哀想…」

低く言う政宗は明らかに怒っている
今まで経験上、怒った政宗には何を言っても通じない

「shut up!!じゃあ何されてもへらへらしてんのか!」

「…ごめんなさい」

膝に手をおいてスカートの裾を掴み俯いてしまった
そんな顔させたいんじゃない…


「おーい桃花!待たせたな!」

大きな声で入ってきた元親を見て急いで荷物を持って政宗の横を通り抜ける

「政宗くんまたね」

別れたあと幾度も聞いたその言葉は言われる度壁が厚くなるようで苦しい

スマホを取り出し一言、sorryと送る

面と向かっては言えない俺が女々しくて嫌いだ



元親の話も耳に入らず上の空

政宗と手を触れたのもあんなに近くに来たのも怒られたのも久しぶり

本当はやった子が責められるのも嫌だけど、あなたに面倒くさいって嫌われるのが嫌だった
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