姫花忍

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煙草の香りがするいつもの部屋であいつが風呂に入っている間に腰当たりに敷いていたびしょ濡れのバスタオルと自分が吐き出した物がたっぷり入った袋、丸めたティッシュの数々を片付ける

ピンクの充電器が刺さった俺と色違いのスマホの画面が明るくなり反射的に見ると男の名前で着信があった

それをみて表情も気持ちも曇る
こんな感情を持ったのは初めてじゃない

「シャワーありがとね。洗濯機回す?」

「いや…いい」

灰皿にくわえた煙草を押し付けると目の前でベッドから落ちた下着と服を拾い、着替え始める桃花をぼんやり眺める

着替え終わり温くなった麦茶を飲み干して手櫛で髪を整える桃花にぽつりと呟く


「別れる」


手が一瞬止まりゆっくりこちらを見る桃花の顔は冷静で、自分の考えていた反応とは些か違っていた

「わかった。じゃあね」

ピンクの充電器を抜き取り、スマホをポケットに入れるとさっさと部屋から出ていく
ぱたぱたと階段を下りる音が遠く、ガチャンと玄関の閉まる冷たい音を聴くと額を支えるように手のひらで覆い大きくため息をつく


これが本当によかったのかは解らない

小さいころから幼馴染みで家も隣、ずっと同じ学校に通い、高校に上がると同時に付き合い始めて1年、あっけなくこの恋は幕を引いた
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