立場は違えど
□監視でしょうか
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バーについて、着替えてカウンターに入った時には既に昨日の二人が居た。
私に気付いてスクアーロさんが手で来いと示した。
「…仮にも勤務中なのよ」
なんとなくカチンときたから言ってみた。
すると、スクアーロさんは眉根を寄せて困ったような顔をし、もう一人の黒髪さんは片眉を上げてこちらを見た。
「バカか、テメェ」
いきなり馬鹿にされた。
「…?なんでよ」
「…フン」
黒髪さんは鼻で笑って、グラスに口をつけた。
意味がわからないという顔をしていた私の様子を見て、スクアーロさんがため息まじりに苦笑して呟いた。
「自覚ねぇなぁ…」
バカの自覚か。あるわ。
どうでもよくなって、布巾を持って空いてるテーブルを拭きに行った。
ちらりと時計を見ると、時刻は10時過ぎ。いつもならこの時間から混んでくるのだが今日はガラリとしている。カウンターの二人以外に、テーブルのお客さんが三人。一人と二人に分かれている。
そんな日もあるか、と考えるのをやめた。
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名前が布巾を持ってテーブルに行ったとき。
イタリア語で、スクアーロはXANXUSに笑みを隠さずに話しかけた。
「あんなんじゃ気づくもんも気づかねぇだろぉ。
悪い虫が寄らねぇように見張ってるだなんてなぁ」
クククとグラスを弄りながら笑うスクアーロを睨み、同じくイタリア語で言葉を返した。
「アイツに気付かせるのは後でいい。そこのカスに示せば十分だ」
そう言うと、厨房から二人を凝視する三十路過ぎの男を挑発的に睨んだ。