立場は違えど

□近況報告?
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あの後、長髪の彼は渋々と掴んでいた手を離してくれた。店長は不服そうだったけど、黒髪の彼が睨んだ瞬間奥に引っ込んだ。

「で?」
「え?」

しばしの沈黙。
先に口火を切ったのは長髪の彼。

「んなところで何してやがる?学生様の身分だろぉがぁ」

でた。この質問。

「高校に行けるくらいの経済力がないんです。だから働いてます」

なんともないように、いつものように答えた。つもりだった。

「…」

黒髪の彼がこちらを見ていた。見透かそうとしているようで、気まずくなった。
耐えかねて、言ってしまったのは仕方が無い。

「…子供がいるから、学校いけないの」

長髪の彼は(長髪さんでいいや)グラスを口に運んだポーズのままこちらを凝視し、

「はぁ⁈」

盛大に身を乗り出した。
黒髪の彼(黒髪さんで)も黙ってこちらを見ていた。

「そのままの意味よ。子供がいるから、学校に行ける時間も経済的余裕もないの」
「ゔぉ"お"お"い"、ちょっと待て。それは沢田達は知ってんのかぁ?」
「知ってるわ。どういう事情なのかも。あくまで友人としてね?私はもう」

そこで、お酒のボトルを取って言葉を切った。
怪訝な顔をしているのを背中で感じる。
向き合って真っ直ぐに言った。

「マフィア関係者じゃないから」

また沈黙。
長髪さんがぎこちなくグラスを置いて、黒髪さんが眉を寄せた。

何か、あるのかしら。
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