Thank you 4 Anniversary
□飛んでけベイビー第六話
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前回までの雑なあらすじ
千鶴に真実を教えることが出来ないまま月日のみが流れた。
その間も千鶴は「あの家の奥さんがおめでたかも」という情報を得る度その家の方向の空を時間があれば見上げて居るはずのない鳥を探していた。
***
「千鶴ちゃん、今日はやけに空を見るのね。空に何かあるの?」
巡察に同行していると偶然お千ちゃんに会った。原田さんのご厚意に甘え、原田さんたちが町内を巡察で回って戻ってくるまでの間、お千ちゃんと甘味屋さんで女子会中なのだ。
「あっちの方向に乾物屋さんがあるでしょう?そこの女将さんがおめでたかもしれないんだって」
「ふ〜ん。それで?どうして空を見ているの?」
もしかしたらお千ちゃんは、実は赤ちゃんは鳥が運んできて来るという驚愕の事実を知らないんだな、と私は思った。だから教えてあげようと思いながら空を再び見上げたとき……
「……!!!!み、見て!お千ちゃん!!!!」
「え?何を?」
私の指さす空に尋常じゃない早さで飛ぶ大きな何かが見えた。きっとあれが秘密裏に赤ちゃんを運んでくる鳥に違いない!なんて大きいのだろう。そしてあんなに早いのだろう。
あんなに早く激しく飛んでいては……
「あ、赤ちゃんが落ちちゃう!」
「赤ちゃん?!……千鶴ちゃん、あなたさっきから一体何を言っているの?よく落ち着いて見てご覧なさいよ。あれはむささびのように空を飛び回る風間よ」
「……え!?」
「あ〜ぁ、飛んでいるところを千鶴ちゃんに見つかったのが余程嬉しいみたいでこっちに来るわよ」
私より目の良いお千ちゃんが冷静にそう言って、がっかりすると同時に焦った。私は別に風間さんが飛んでいるところを見たかったわけじゃないのに。
「華麗に飛んで移動している俺を見つけるとは流石我が嫁だ。しかも俺との子を一日も早く産みたいと叫んでいたな」
「風間さん、耳大丈夫ですか?私はそんな事言ってません。私は空を眺めて赤ちゃんを運んでくる鳥を探していただけです。そもそも赤ちゃんは仲睦まじい夫婦の所に鳥さんが運んで来るんですよ?私と風間さんの間に赤ちゃんが飛んでくる訳ないじゃないですか!」
「「……」」
すっと目の前に降り立った風間さんにそう言い返してやると風間さんとお千ちゃんが何だかポカンとした顔で私を見ていた。
「千鶴〜!屯所にそろそろ戻るぞ……っ!風間!?てめぇ何しに来た!?」
「邪魔な犬どもか……我が嫁よ。今度屯所に嫁になる者の心得を届ける。心して学ぶと良い」
遠くから原田さんたちが風間さんに気付き駆け寄ってくる足音がするなか、風間さんは再び鳥のように舞い上がると消えていった。
少し思案顔をしていたお千ちゃんは原田さんに向かって何か頼みごとをしている。
「原田さん、千鶴ちゃんを日が暮れるまで預からせてくれない?」
「どうしてだ?」
「何も知らない千鶴ちゃんはかなり危険だから、お菊からわかりやすく教えてあげようと思うのだけど」
一体お千ちゃんが何を頼んでいるのかサッパリわからなかったけど、原田さんはお千ちゃんの曖昧に濁した話し方でも何か理解したようで「すまねえが頼む」と言って隊士を連れて帰ってしまった。
「千鶴ちゃん、島原のお菊のところへ行くわよ」
「え、あ、うん……」
そしてその後、私は衝撃の事実を知ることになるのだった……
__翌日。
「ごめんください。風間からお届け物です」
突然現れた天霧さんが持ってきた大量の書物はあまりに刺激が強すぎるためほとんど使われていない倉庫にぶちこまれたのだった。