Thank you 4 Anniversary

□飛んでけベイビー第五話
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「千鶴が知らねえ事を俺たちがここで悩んだって、知らねぇものは知らねぇんだから、しょうがねえじゃねぇか!」

俺の発言に皆が注目する。土方さんも斎藤も平助も……総司はちょっとわからねえが、この問題を難しく捉えすぎだと思う。この問題は少し考えれば単純かつ簡単に解決するというのに。

「知らねえ事が問題なら教えてやれば良いじゃねえか。千鶴だっていつかは知らなきゃいけない事なんだから」

「それもそうなんだが……」

「あ〜もう、まどろっこしいな!何なら俺が教えてきてやろうか?口頭でも実地でも……」

提案の途中で、ダン!っと凄い勢いで土方さんが湯飲みを置いた。

「雪村に真実を教えるのは駄目だ!口頭も……実地なんて尚更だ!」

「何でだよ?別に俺だって手を出さずに口だけで説明するくらい出来るぜ……たぶん

「何で後から小さくたぶんって言ったんだよ左之さん!」

「そりゃあ……男だからよ?」

「何だよそれ!」

抜本的な解決案だと思ったのに土方さんは渋い顔で認めようとしない。どうしてだろう?と不思議に思っていると土方さんが俺の顔を見た。

「よく考えてみろ原田。父親である綱道さんは『赤子は鳥が運んでくるんだよ』と娘に教え込む奴なんだぞ。仮に俺たちが今日、雪村に真実を健全な方法(口頭のみ)で説明し、教えたとして……もし明日綱道さんが見つかったとするぞ……?」

((以下幹部隊士の頭の中に描かれる未来予想図))

「と、父様〜〜!!」

「千鶴!突然消えて悪かったね」

屯所の一室で感動的な再会を果たす父娘。行方をくらませた綱道が現れた事で羅刹についても話を聞けるかもしれな……いや、話を聞き出さなくてはいけない。
綱道が何を考え新選組に変若水を持ち込んだのか、奴の目的は何か、羅刹になった者へ救済はあるのか、聞きたいことは山のようにある。そしてこちらには綱道が逃げられないようにする秘策がある。
それは千鶴だ。彼の娘はこちら側の人質と言っても過言では無い。奴が真実を教えないなら千鶴を使って脅して…………

感動的な再会を眺めながらこれからの流れを想定していると千鶴が綱道の胸をぽかぽか叩きながら言った。

「もう、父様の馬鹿!」

「ははは、心配させてすまなかったね」

突然行方不明になり、どれだけ心配させてしまっていたのか、久々に見る娘の姿に綱道は胸を熱くしながら答えた。愛娘の頭を撫でようとしたその手を千鶴は勢いよくはねのけた。

「私、父様が居なくなって怒ってるんじゃありません!」

「…………え?」

「どうして赤ちゃんの授かり方をちゃんと教えてくれなかったんですか!?私昨日大恥かいたんですから!!!」

顔を真っ赤にして何かを思い出しているのか体を捩りながら怒る千鶴の様子に綱道の表情が凍る。超純粋培養で育てていた娘が大人への階段を知らぬ間に飛び越えていたようだ!!

「綱道さん、聞きたいことがあるんだが……」

「……奇遇ですね。私もあなたたちに聞きたいことがあるんですよ?一体誰ですか千鶴に手を出した輩は!!!」

「ご、誤解だ!綱道さん!!」

「問答無用!!!」

そして屯所はとんでもない修羅場に…………


((以上で妄想終わり))


「ま、絶対ろくな事にならないよね」

総司の言葉に皆、頷くしかなかった。でも、ここで千鶴に真実を教えることを諦めていいのか?!諦めたらそこで試合終了じゃないか!何の試合かは知らないが!!

俺は考えた。すると頭の中で一人の俺が囁いた。

『故意が駄目なら事故にしちゃえば良いんじゃない?』

そう、ここは男所帯だ。何かの事故で春画を見たり、男女の生々しい色事の話を聞いてしまって事実を知ってしまう、というのはアリではないか。
綱道さんも事故ならしょうがないと諦めるに違いない。
俺の提案は他に解決案が浮かばなかったためすぐに了承され、事故を装った故意の塊の計画はすぐに実行に移されることになった。
実行役は勿論俺だ。計画は簡単だ。千鶴の近くに紙を落とすのだ。
それは営みについて詳細に書かれた春画で、拾えば必然的に事実を知ることになるだろう。

「あ、原田さん。会議は終わられたんですか?」

「お、おう」

さっそく廊下には源さんの手伝いを終えたのであろう千鶴が空を見上げていた。千鶴の後ろを通った時にこの春画をさりげなく落とせば……


「あ、原田さんも写生に来たんですか?」

「しゃ……しゃせい?!射……あぁ写生か」

俺の手元にあった紙が少し見えたのか千鶴が嬉しそうに言ってきた。俺はというと千鶴の言った言葉が理解できるまで少し時間がかかってしまった。べ……別に変な疚しい事なんて何も浮かべてはいない。

「俺は写生じゃねぇが……千鶴は写生すんのか?何を?」

「えへへ……赤ちゃんを運ぶ鳥さんが見えたら描きたいと思って!井上さんが紙をくださったんです!原田さんも一緒に写生しませんか?一体どんな鳥さんなんでしょうね!?」

キラキラキラ。そんな目をした娘の背後に春画を落とせる男なんているのだろうか、いや絶対居ない。

目標達成できなかった俺を責める者はいなかった。

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