Thank you 4 Anniversary
□飛んでけベイビー第三話
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「千鶴〜?何でそんなに空を見てんだ?」
「あ、平助君、斎藤さんお帰りなさい」
「ただいま!ちょっと横、座っても良いか?」
巡察から帰って土方さんへの報告を終えて廊下を歩いていると、千鶴が何だか愁いに満ちたような顔で空を見上げていた。
一体どうしたんだと心配になって千鶴の横に座ると、同じように心配に思ったのか一君も一緒に縁側へ腰掛けた。
「ずっと空を見ているんだけど……なかなか見れなくて」
「……何を?」
青い空を見上げながらそう呟く千鶴。空をずっと観察して見たい物とは何だろう。流れ星?いやいや、昼間に見れるわけがないって千鶴でも分かるだろう。
「虹か何かを探しているのか?」
一君が不思議そうに空を見ながらそう言った。確かに虹なら星とは違い昼間見えるもんな!とオレが納得したのも一瞬だった。
「虹じゃありませんよ。雨上がりでもないのに虹が出るわけ無いことくらいちゃんと分かってます」
「……では何を?」
本当に答えがさっぱりわからなくて訊ねた一君とオレに向かって千鶴は眩い微笑みで言い放った。
「赤ちゃんを授かる瞬間が見れるようにこうして待ってるんです!!」
千鶴はこんなに可憐な笑顔で、清純な雰囲気で、かわいい声で、真っ昼間から何を大きな声で言っているのだろうか。
赤ちゃんを授かる瞬間って……それって、つまり……あ、あれだよな、男と女が……あの、その……アレだよな?……えっ、待って、ソレってオレの知る限りでは空を見ていても見れるものではないと思うんだけど……???
やべぇ、千鶴の言ってる事の意味がさっぱりわからねぇ。
はっ!そうだ、一君!!!一君ならいっぱい本を読んで物知りそうだし、千鶴の言っている意味が分かっているかも……
と、淡い期待を抱いて千鶴を挟んで反対側に座っている一君の方を見てみると……
「……」
一君は恐ろしく真面目な顔で真っ青な空を凝視していた。あぁ、一君も絶対わかってねぇな、と思うと同時に一君はちょっと天然だったと思い出した。
このまま三人で居ても絶対に答えは出ないだろう。左之さんとか総司とか土方さんに訊いてみた方が良さそうだ。そう思った時に千鶴が再び口を開いた。
「一体どんな鳥なのかな?平助君や斎藤さんはご存じですか?」
「「鳥っ!?」」
頭の中で浮かんでいた光景と千鶴の言った鳥という言葉があまりにかけ離れていて二人同時に素っ頓狂な声をあげてしまった。
バサバサ……!
「あ、カラス!」
そんなオレをあざ笑うかのように、その時 一羽のカラスが屯所から見える空を悠然と横切っていった。