鬼灯の冷徹 長編
□第四夜
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「鬼灯?」
「はい、なんですか?」
「お出かけしちゃうの?壱岐、お留守番?」
せっせとなにも言わずに支度をする鬼灯をみて不安そうにする壱岐
さみしそうに眉毛をへの字にさせ鬼灯を見上げる
「今日は薬を取りに行こうと思うんですが....「壱岐もい、いってみたい...なぁ」...言うと思いましたよ」
目をキラキラさせてでもちょっと恥ずかしそうに控えめで小さな声で話鬼灯をみる壱岐にまたきゅんとしてしまう
「....仕方ないですね、連れて行ってあげますけど絶対に手を離しちゃダメですからね」
「はぁい」
薬を取りに行くといえばどこにいくなんてわかっている
本当は行きたくもないが何かあった時の薬がなくては大変だ
あんなやつのところに壱岐を連れて行くなんて嫌だがあんな目で見られてしまっては仕方ない
壱岐を合わせずにとりに行くとしたらどうしようか
「鬼灯...?怖い顔してる...」
「っあぁすみません。すこし考え事してました」
心配そうに下から鬼灯の顔を覗き込みきゅっと握った手に力を込める
「やなことあるの?やっぱ来ちゃいけなかった..?」
「そんなことないですよ、ただこれから行くところにはとっても危険な生き物がいるんです」
「きっきけん...?」
「はい、人の姿をしている女ったらしな妖怪なんです」
「女ったらしってなに?」
「世は最悪な男ってことです」
考えるだけで苛立たしい
眉間にシワを寄せて舌打ちをする鬼灯を壱岐はなんともむずかしそうな顔をした
「どんなかんじの妖怪さんなの?」
「そうですね、黒髪で目が細くて狐みたいな奴です。あとは割烹着なのかよく分からない白衣らしきものを着てます、絶対に目を合わせてはいけませんよ」
「うっうん...」
ゴクリと唾を飲み込むと鬼灯は壱岐と目線を合わせるために中腰になっていたのをやめ歩き出そうとする
「では行きましょ...「わっわぁあっ」壱岐っ」
壱岐は差し出された手をとろうとした瞬間人混みの波に攫われてしまう
ただでさえ体の小さい壱岐にはいくら身長が高くて見つけやすい鬼灯でも四方八方にいる人混みからでは見えない
一気に体から冷や汗が出る
周りには知らない人ばかり
「ほっ鬼灯っ」
助けを求める壱岐の声はもう鬼灯には遠すぎて聞こえなかった
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