科学室
□空も飛べたら。
1ページ/1ページ
鳥になりたかった少年は、2階から身を投げた
翼なんて生えていない
そんなことは知っていた、みんなだって、少年だって
だけど、今なら飛べた気がしたんだ
親にそう告げると
「 馬ッ鹿じゃないの 」
そんな冷たい言葉が返ってくるだけだった
母親は少年の頬を叩き泣いた
父親はその泣いている母親を慰め、少年を睨んだ
「 ガキみたいなことはもうやめろ 」
少年は、少年にもなれなかった
大人にはなりたくない、ただそう思った
少年は少年にもなれないうちに、大人になった
そして彼は、私立九瓏ノ主学園の教員になった
彼はずっと生徒にはこう伝えていた
まだ大人じゃないんだから今を全力で楽しめ
彼がすっと出来なかったことだ
だけど「彼ら」なら、
彼は考えた、
今なら飛べるはず、と
…終…