Too important

□第一訓 天然パーマに悪いやつはいない
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第一訓 天然パーマに悪いやつはいないかもしれない


「侍の国」

この国がそう呼ばれていたのは今は昔の話。

かつて侍たちが仰ぎ夢馳せた江戸の空には、今は異郷の船が飛び交う。
かつて侍たちが肩で風を切り歩いた街には、今は異人がふんぞり返り歩く。

「だからバカおめっ・・・違っ・・・。そこじゃねーよ!!そこだよ、そこ!!」

そんな時代のとあるお茶屋。
一年務めているのにもかかわらずレジ打ちもできず、店長らしき人物に怒られている。
少年と呼ぶには少し違い、青年と呼ぶにはあどけない。

「す・・・すみません、剣術しかやってこなかったものですから」

その男の名を、志村新八。

「てめェェェ、まだ剣ひきずってんのかァ!!」

そう言って新八を殴る店長らしき人。
新八はグハッと声を上げて倒れた。そして、殴ったあともクドクドと説教を続ける。
そんな時、店に居た客が店長に声をかけた。

「おいおいそのへんにしておけ店長、おい少年。レジはいいから牛乳を頼む」

今牛乳を頼んだ者は、侍の国を滅ぼし、刀を奪うきっかけとなった異人と同じ別の星から来たもの。この男は、豹のような顔をした猫人間みたいなヤローである。
新八は注文を承り、牛乳を用意しに行く。その間、店長(らしき人じゃなかった、本人だった)と猫ヤローが話している。

「旦那ァ、甘やかしてもらっちゃ困りまさァ」

「いや、最近の侍を見てるとなんだか哀れでなァ。廃刀令で刀を奪われるわ、職を失うわ。ハローワークは失業した浪人で溢れてるらしいな」

そんな時カチャカチャと音をたて、牛乳を持って帰ってきた新八。
そして話をまだ続けている猫ヤローは、

「我々が地球に来たばかりの頃は、事あるごとに侍達がつっかかってきたもんだが。こうなると喧嘩友達なくしたようで寂しくてな」

そういうと、その猫はすっと足を出し、注文された牛乳を持ってきた新八をこかした。

「つい、ちょっかい出したくなるんだよ。ワハハハハッ」

そんなことをされた新八はというと、自分が悪いんだから謝れと店長に言われ、天人と侍のことを考える。天人が来たことにより、侍は弱体化の一途をたどった。
誇りも、剣も、何もかも捨て去った彼ら、もうこの国に住まうものはみんなもう。

そんなことを考えていた新八にある男の声が聞こえてきた。

「おい」

その男は新八にではなく店長に話しかけた。
店長に話しかけた男は、何を思ったか店長を殴り飛ばした。
殴り飛ばされた店長は、天人のテーブルに頭をぶつけ、天人は驚いている。

『何してんだ、あのクソ天パ・・・』

店長を殴り飛ばした男の連れの女は、呆れているが慌てることなく、むしろ落ち着いてのんきにコーヒーを飲んでいる。口調は苛ついているように感じるが、顔を見る限りそんな様子は一切ない。

「なっなんだァ!?」

「何事だァ!!」

そう騒ぐ天人たち。
新八もまさかこんなことになるとは思わず、目を点にして驚いている。
だが、内心はそんなことに驚いているのではなく、店長を殴り飛ばした男の腰にささっている木刀を見て「侍」かと驚いていた。彼はもう侍は居ないと思っていたのだから仕方がないことである。

「なんだ貴様ァ!!」
「廃刀令のご時世に木刀なんぞぶらさげおって!!」

天人たちはどんどん騒ぎ立てる。だが、そんなことはお構いなしな天パヤローはマイペースにツッコミを入れた。

「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ、発情期ですかコノヤロー」

この男、銀髪の天然パーマに木刀を持った、侍。

名を坂田銀時。

『え、うそー発情期?やぁねぇ、男なんて万年発情期みたいなもんでしょ』

と、どこかずれたことを言っている女。
黒く艶のある綺麗な髪を頭の下の方で一つに結び団子にした、落ち着いた物腰で前を見据える。刀こそ持っていないが、その目は侍の目。
名を瑞希。

銀「見ろコレ・・・てめーらが騒ぐもんだから、俺のチョコレートパフェが、お前コレ・・・まるまるこぼれちゃったじゃねーか!!」

そう言って銀時は天人を木刀で殴った。
銀時が暴れている傍では

『あらあら、これちょっとやばいんじゃないの?止めないけど』

新「止めないのっ!?」

のんきに会話をする二人。初めてあったとは思えないツッコミに少し(表情では読み取れないが)驚いた瑞希。そんなことには目もくれず、銀時は暴れている。

「・・・きっ・・・貴様ァ何をするかァァ!!」
「我々を誰だと思って・・・」

銀「俺はなァ!!医者に血糖値高過ぎって言われて・・・パフェなんて週一でしか食えねーんだぞ!!」

そう言ってまた一人、木刀をふるった。

『それはテメーのせいだろバカ野郎』

だがしかし、木刀をふるっている銀時の方から猫ヤローが飛んできた。
新八は「なんか飛んできたァァ!どうすんのコレ!どうすんのォォ!!」と騒いでいるが、そんなことは露知らず。瑞希は静かに立っていた。

『・・・お茶屋ってのはねぇ静かにお茶を飲んでその時間を楽しむものなのよ。そんなことも分からないなんてバカなの?ってわけで、離しなさいっ!!』

瑞希はそう言って静かに起こり、吹っ飛んできた天人の腕をもって背負い投げで吹っ飛ばした。それを見た新八に限っては「ウっソォォォォォ!!」っと叫んでいる。

『まったく・・・』

そう言って手をはたき、汚らわしそうに近場にあったお手拭きで手を拭いている。
そんなところに銀時が頭を掻きながら近づいてきた。

銀「そいつらもバカだな、お前を人質に俺を止めようとするなんてよォ。一応聞くが怪我ねェな?」

『当たり前でしょ』

銀「だよな。お前に結局イイ所取られちまったなァ」

そう言って、銀時は出口の方へ向かっていく。

銀「店長に言っとけ、味は良かったぜ」

そう言って出て行った。瑞希は片腕あげて出て行った。
そんな2人を見ていた新八には、侍というには余りに荒々しいがチンピラというには真っ直ぐな目をした男と、口が悪いが少し恐怖を感じるほどきれいな目をした女だった。
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